現在の国内流通の大半は、桝井光次郎が1909年にアメリカから持ち帰ったドーフィン種(桝井ドーフィン)が主品種で8割ほどを占めますが、江戸時代・寛永年間(1624~1645年)に伝わった「蓬莱柿」、桝井ドーフィンの突然変異である「サマーレッド」も各地で栽培されています。夏果6~7月)のイチジクは、皮ごと食べられる白イチジク系のキングに代表的なように淡白な味のものが多いのですが、秋果(8月~10月)に出回るイチジクは、濃厚な甘さを誇るセレストブルーやビオレソリエス(Viollette de sollies 別名黒無花果)などが、最近では少ないながらも流通しています。輪切りにしたときのちょっとグロテスクな見た目とくすんだ皮の色から食わず嫌いで敬遠されがちなイチジクですが、桃やメロンのような苦味・刺激も、スイカなどのような青臭さも、南国系フルーツのような臭みも(それらはそれでそれぞれのフルーツの美味しさともなっていますが)なく、日本人好みの優しい癖のない味わいですよ。
参照
植物の世界 (朝日新聞社)
樹木 (富成忠夫 山と渓谷社)
マルコ伝 (R・シュタイナー 市村温司訳 人智学出版社)
イヌビワ,イタビ,イチヂクの語源について (津山倫)