狩猟能力に優れたイソヒヨドリは、磯ではカニやフナムシを捕らえていたように、都市部では多く生息するゴキブリやネズミをよく捕らえて食べます。都市鳥として、害虫・害獣を駆除する益鳥としての側面が見られます。飛翔昆虫を捕らえるのも巧みで、つい先日も、大型ショッピングセンターや駅の高架、高層マンションなどが林立するイソヒヨドリ好みの環境の町中で、飛び回るバッタを追い回して捕らえる鮮やかな手並みを観察することができました。
一方、イソヒヨドリによってツバメの巣が襲撃され、雛が犠牲になるという事案も発生しているようです。人家の、蛇やカラスなどの近づけない軒などに巣を構えてきたツバメにとっては思いも寄らない天敵が出現したことになり、もしこの後も住宅地にイソヒヨドリの繁殖が増え続けるとするなら、懸念材料でもあります。
鳴き声は非常に美しく、特に春から夏にかけての繁殖期ごろのオスは、縄張りの高い場所をソングエリアとして利用して高らかに歌を奏でます。マンションやショッピングセンターの屋上で、豊かな抑揚と複雑な音程の鳴き声はまさに絶品。聞きほれてしまうふくよかな美声は、イソヒヨドリの大きな魅力です。一方で鳴きまねも得意で、特にアマガエルにそっくりの声で「クケケケ、クケケケケ…」と鳴くこともよくあります。カエルをおびき寄せようとしているのかもしれません。
また、あるときイソヒヨドリが明け方、ベランダに来て手すりにとまり、家の中に向けてしきりに囀るので何かとのぞけば、餌をくれとねだっていたようです。まるでネコのような無邪気さと甘え上手です。派手な体色の鳥は、概ね警戒心が強いものですが、イソヒヨドリはほとんど人間に警戒心を持ちません。これは人間の住む環境に参入しはじめた歴史が浅く、他の野鳥たちのようにまだ人間にひどい目にあったことがないためでしょう。餌付けをすれば、比較的容易に手に乗って餌を食べるほどに慣れることもあるようです。そんな友好的なイソヒヨドリ。今後もその愛嬌のある性質を維持し、身近な親しい野鳥として生きていってほしいものです。
(参考)
日本の野鳥 山と渓谷社
小笠原諸島におけるイソヒヨドリによる外来植物の種子散布(地球環境 Vol.14 2009) 川上和人
としちょう・NOW(都市鳥研究会)