刺身や酢だこ、たこしゃぶやたこ飯、塩辛などはもちろん、おでんの具やたこ焼きでもよく食べられるタコ。
その主要種であるマダコは特に愛好され、名産地はいくつもありますが、兵庫県明石と千葉県大原のマダコが、国産ニ大ブランドとされています。
しかし、マダコの国内漁獲は需要の半分もなく、1970年代頃から漁獲は減り続けており、長らく西アフリカのモーリタニアや北アフリカのモロッコからの輸入に頼っています。
ところが近年、国内だけではなくスペインなどの消費拡大で乱獲が続き、マダコの資源量は世界的に深刻な枯渇事態になりつつあります。子供のタコも一網打尽にする底引き網漁、砂漠化による沿岸海域の水産資源全体の減少なども枯渇の原因と言われています。
「タコは頭がいいから食べてはいけない」などと言う気はありませんが、タコもまた漁獲圧や捕食圧に抗しつつ生き抜いてきた貴重な生物です。彼らが充分に生きていけるだけの環境を保ち、漁を適正に抑制するのは、人間の生物としての仁義ではないでしょうか。心や痛みのない下等生物と考えている限り、タコへの過酷な漁は持続するでしょう。
夢を見、生きる喜びも知るこの愛すべき生き物の暮らす沿岸域の海が、地獄のような場所ではなく、安らかに生きていける場であってほしいものです。
(参考・参照)
タコの知性 その感覚と思考 池田譲 朝日新書
深刻化する環境問題に耐えるモーリタニア三原のたこ漁