日本気象協会 tenki.jp

今年も満開!あさって復興記念桜は6年生

2017年05月02日

宮城県東松島市の「復興記念桜」(2017年4月21日撮影)

宮城県東松島市の「復興記念桜」の植樹からあさって4日で6年。今年も元気に満開を迎えた桜のようすを取材しました。
ポイント解説へ

間もなく6年目を迎える「復興記念桜」を訪ねて

東松島市矢本上沢目の「復興記念桜」の地(2017年4月21日撮影)

宮城県東松島市の「復興記念桜」は、日本気象協会が2012年に行った「春を報(しら)せる百円玉プロジェクト」で皆さまから募金を募り、東日本大震災の被災地に桜を咲かせるためのプロジェクトとして、第1回目に植樹させていただいた桜の地です。場所は、東松島市矢本上沢目。6年前、津波は、この場所の目の前の道路まで押し寄せてきました。その記憶を忘れないようにするとともに、復興のシンボルとして人々が集まる場所になってほしい。そんな願いを込めて、シダレザクラとソメイヨシノを15本ずつ植樹しました。普段は、東松島市鹿妻二区の皆さまがお世話をしてくださっています。

▼春を報(しら)せる百円桜プロジェクトとは
https://tenki.jp/sakura/column/

毎年楽しみにしている満開の便りが届き、少し前の4月21日に「復興記念桜」を訪ねました。仙台が桜の満開を迎えてから約一週間、すでに仙台市内の桜は散り始めていましたが、東松島市内は、桜がちょうど見頃を迎えていました。

あさって5月4日で植樹から6年目を迎える桜たち。
まだ小さく、遠目からではわからなかった木々たちが、歳月を経て、まだ少し冬の色が残る大地に、ぽつぽつと立ち並ぶ小さな桜の木たちがはっきりと見えるようになりました。年々成長している証拠ですね。

【ソメイヨシノ】枝いっぱいに花が咲いて一層華やかに

立ち並ぶソメイヨシノ(2017年4月21日撮影)

初めてソメイヨシノが花を咲かせたのは3年前、桜の植樹から3年目を目前にした頃でした。その時はまだ葉が茂る中にぽつぽつといくつか花が咲いている状態でしたが、3年でここまで花をつけるようになりました。

満開のソメイヨシノ(2017年4月21日撮影)

▼3年前のソメイヨシノのようす
http://www.tenki.jp/suppl/nicchoku_fuku/2014/04/24/20531.html

木の高さは2メートル前後。まだまだ小さくても、こうして枝いっぱいに花をつけて咲くまでに成長し、年々その華やかさが増しています。

【シダレザクラ】枝の長さも数もすくすくと

シダレザクラ全景(2017年4月21日撮影)

シダレザクラは、今年もまた枝が伸びて、そろそろ支柱を伸ばさなければいけない高さになりました。また、枝垂れている枝の数もかなり増えてきました。

華やかなシダレザクラの花(2017年4月21日撮影)

▼3年前のシダレザクラのようす
http://www.tenki.jp/suppl/nicchoku_fuku/2014/04/24/20531.html

シダレザクラはソメイヨシノよりも少し開花が遅いため、この日はまだつぼみや開きかけの花がありました。この場所では例年、ソメイヨシノとシダレザクラの花の咲く時期が少しずれる傾向があるため、比較的長い間、花を楽しむことができそうです。

【6年目目前の課題】折れてしまった木、花の咲かない木

折れてしまった桜の木(中央)とその折れた木の断片(右)(2017年4月21日撮影)

一方で、やはり順調なことばかりではありません。

残念ながら、一本だけ折れてしまったソメイヨシノの木がありました。根元には虫に食べられたような跡があり、風ではなく、虫にやられてしまったようです。無残にも、近くには折れて枯れてしまった枝木が落ちていました。それでも、折れたところからは、再び新しい枝が伸び始めていました。桜の強く健気な姿に、復興を目指して前に進み続ける地区の皆さんの姿が重なり、胸が熱くなりました。

花が咲かない桜の木(2017年4月21日撮影)

そしてこちらは、唯一、花が咲かないソメイヨシノの木。青々と葉が茂っており、葉桜の状態。植樹からまだ一度も花芽をつけていません。病気なのか、それとも種類が違うのか、地区の皆さんも私たちも首を捻るばかりです。

【インタビュー】「まずは10年」強く大きく咲き誇る桜になるために

桜のお世話をしてくださっている東松島市鹿妻二区の代表・齋藤さん(右)(2017年4月21日撮影)

昨年に引き続き、桜のお世話をしてくださっている東松島市鹿妻二区の代表・齋藤さんにお話を伺いました。

―もうすぐ6年目、だいぶ大きくなった印象がありますが、いかがですか?
齋藤さん:「昨日はものすごい強風で、きっとここの桜も散ってしまうと思っていたのですが、今もこれだけしっかりと咲いていて、驚いています。元気に育っている証拠ですね。しかし、みんなでお花見ができるようになるには、まだ少し小さいですね。見頃になるのは10年目くらいかな、と思っています。」

桜が、強風に負けないくらい強く育っているのは、皆さんのお手入れの賜物ですね。あと5年後には、関係者だけではなく、たくさんの方がここを訪れるようになってくれるといいですね。

―これからのお手入れについては、どのようにお考えですか?
齋藤さん:「年々、桜が咲くようになってきた半面、すべての木が元気というわけではなく、折れてしまったり、花が咲かなかったりと、徐々に問題も出てきました。桜の成長にとっては、これまでの5年よりも、これからの5年の方が、より難しいものになってくると思います。まずは10年目までは、しっかりと世話をしてあげたいですね。」

私たちも、折れてしまった木を目の当たりにした時は、とても悲しい気持ちになりました。いよいよ、植物を育てることの難しさに直面したことを痛感しています。「まずは10年」、私たちにもしっかりお手伝いをさせてください!


これからの5年が大切であることは、私たちも今日の桜のようすを見て強く感じました。
これまでは、まずは花を咲かせるための5年だったように思います。これからの5年は、その先、桜が自力で育っていけるように「強く」育ててあげる期間に入ってくるでしょう。
「笑顔」と「強さ」この二つがそろって復興のシンボルとなるよう、これからもこの場所を見守っていきたいと思います。

ぜひ、復興記念桜がもっと元気に、もっと大きくなるよう願いを込めて、引き続き皆さまからのエールをよろしくお願いいたします!

関連リンク

気象予報士/熱中症予防指導員

瀬田 繭美

このライターの記事一覧
ライター一覧