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2015年お天気総決算「お天気10大ニュース」~tenki.jpラボVol.7 その2~

[PR]2015年12月10日

気象予報士と一般の方ともに、印象に残った2015年のお天気ニュースは「台風第18号による大雨(平成27年9月関東・東北豪雨)」が他と大きく差をつけて、1位に選ばれました。
関東・東北地方で起こった記録的な大雨ですが、茨城での堤防の決壊により、濁流によって家屋が押し流されてしまう様子など、衝撃的な災害の映像が全国的にも大きくニュースに取り上げられた影響で、地域を問わず一般の方には非常に強く印象に残ったと考えられます。
気象の現場からも、関東と東北で初の大雨特別警報が発表されたことは非常に異例の出来事であり、関東・東北では近年に例を見ない、歴史的な気象災害といった意見が多いようです。
さらに、2007年の噴火警戒レベルの運用開始以来、初となる「噴火警戒レベル5(避難)」の特別警報が発表された口永良部島の噴火をはじめ、箱根山や浅間山、阿蘇山の小規模噴火など、各地の火山活動が活発になり、普段聞き慣れない噴火のニュースが連日メディアで取り上げられたことで、一般、気象予報士ともに強く印象に残っている方が多かったようです。
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1位 台風第18号による大雨(平成27年9月関東・東北豪雨)

台風第18号は、9月9日10時過ぎに愛知県知多半島に上陸した後、日本海に進み、9日21時に温帯低気圧に変わりました。台風第18号や台風から変わった低気圧に向かって南から湿った空気が流れ込んだ影響で、西日本から北日本にかけての広い範囲で大雨となりました。特に関東地方と東北地方では記録的な大雨となり、大雨特別警報が宮城県・茨城県・栃木県に発表されました。降水量は、関東地方で600ミリ、東北地方で500ミリを超え、9月の月降水量平年値の2倍を超える大雨となった所がありました。この大雨で、茨城県を流れる鬼怒川の堤防が決壊するなど、土砂災害、浸水、河川のはん濫などが発生し、宮城県・茨城県・栃木県で計8名が亡くなり、住宅に多くの被害が出ました。9月9日から11日に関東地方および東北地方で発生したこの豪雨は、「平成27年9月関東・東北豪雨」と命名されました。
(衛星観測データ提供:JAXA)

2位 ひまわり8号の運用開始

7月7日、新しい静止気象衛星ひまわり8号の運用が開始しました。ひまわり8号は、7号の後継機として2014年10月7日に種子島宇宙センターから打ち上げられました。世界最先端の観測能力を有する可視赤外放射計を搭載した、静止気象衛星です。アメリカやヨーロッパに先駆けて打ち上げられ、運用を開始したことから、国際的にも注目されています。2016年度には、ひまわり9号も打ち上げられる予定です。ひまわり8号では、「水平解像度の倍増」「観測時間の短縮」「画像種類の増加」と、観測機能の大幅な強化により、台風や集中豪雨をもたらす雲の移動や発達をこれまで以上に詳細に把握できるようになった上、火山灰・黄砂などの分布も高精度に把握できるようになりました。また今後は、的確な予測情報につながっていくことが期待されています。また、試験運用期間中の5月29日には口永良部島の噴煙を鮮明にとらえ話題となりました。

3位 口永良部島で噴火警戒レベル5 箱根山なども火山活動が活発化

5月29日9時59分頃、鹿児島県口永良部島の新岳で爆発的噴火が発生、同日10時7分に気象庁は「噴火警戒レベル5(避難)」の特別警報を発表し、口永良部島全域に島外への避難指示が出されました。噴火警戒レベル5が発表されるのは、2007年の噴火警戒レベルの運用開始以来、初めてのことでした。噴火に伴って発生した火砕流は海岸まで達し、噴煙は火口縁上9000メートル以上に達しました。また、箱根山でも一時的に火山活動が活発化し、6月30日にはごく小規模な噴火が発生したとみられることから噴火警戒レベル3(入山規制)が発表されました。その他にも、浅間山(6月16日)と阿蘇山(9月14日)で噴火が発生し、蔵王山(4月13日)で火口周辺警報(火口周辺危険)が発表され、さらに桜島では8月15日に大規模噴火が起こる可能性が高まったため、一時的に噴火警戒レベルが4(避難準備)まで引き上げられるなど、各地で火山活動が話題となりました。
※2015年12月24日に、一部表現を修正いたしました。
(ひまわり8号がとらえた口永良部島新岳の噴煙/YouTube)

4位 東京の猛暑日8日連続 過去最長を記録

7月終わりから8月はじめにかけて夏の高気圧が日本全国を広く覆い、厳しい暑さが続きました。東京では、最高気温が35℃を超える猛暑日が7月31日から8月7日まで8日連続し、これまでの連続記録である4日を大幅に更新しました。8月7日には37.7℃を記録し、東京で今年の夏、最も暑い日となりました。またこの期間は、関東甲信以外にも、気象庁から東北、東海、近畿地方に『高温に関する異常天候早期警戒情報』が発表されており、岐阜県多治見市では8月1日に全国で今夏最高となる39.9℃を記録しました。さらに宮城県仙台市でも、8月4日から8月7日まで4日連続の猛暑日となり、過去最長の連続猛暑日となりました。
(過去天気:アメダス気温 2015年8月7日)

5位 元日 都心で9年ぶりの雪 京都は大雪の初詣

2015年は冬の嵐で幕開け。日本列島は冬型の気圧配置が強まり、強い寒気が流れ込んだため、日本海側は荒れた天気となり、太平洋側にも雪雲が流れ込みました。東京都心もお昼頃には雪が舞い、元日としては2006年以来、9年ぶりの降雪となりました。そのほか、横浜、名古屋、大阪でも降雪を観測しました。特に大雪となった京都では、積雪は16センチに達し、伏見稲荷は雪の中の初詣、金閣寺が雪化粧した姿もみられました。さらに2日にかけて積雪が増え、1954年以来、61年ぶりに積雪が20センチを超えました。また、元日は全国的に凍えるような寒さとなり、北海道や東北を中心に真冬日地点は274地点(富士山を除く)になりました。東京を含め、関東以西も広く最高気温は10℃に届かず、真冬の寒さとなりました。

6位 台風第11号 近畿地方で記録的な雨

7月4日にマーシャル諸島で発生した台風第11号は、16日23時頃高知県室戸市付近に上陸し、比較的ゆっくりとした速度で四国・中国地方を北上しました。17日、18日には台風や台風に向かって吹く暖かく湿った空気の影響で、西日本と東日本を中心に降水量が多くなりました。特に近畿地方では、24時間の積算降水量がこれまでの観測記録を更新し、平年の7月1ヶ月間に降る降水量を上回る大雨となりました。被害としては、近畿を中心に道路の陥没や土砂崩れが相次ぎ、死者は全国で少なくとも4人が確認されました。また、大雨の影響で近畿地方のJRの列車が立ち往生するなど混乱が相次ぎ、JR京都線では約4時間ものあいだ乗客が缶詰になる列車もありました。
(過去天気:雨雲の動き 2015年7月17日)

7位~9位

7位 台風第21号 八重山地方が暴風 低気圧に変わり北海道でも暴風

台風第21号は、9月23日3時にフィリピンの東で発生し、非常に強い勢力を保ったまま沖縄の八重山地方へ接近し、9月28日16時には与那国島の南西約50キロメートルの海上で中心気圧925hPa、中心付近の最大風速55m/s の猛烈な勢力となりました。この影響で、与那国島では9月28日に全国の観測史上4位となる最大瞬間風速81.1m/sを観測し、住宅に被害が出ました。そのあと西よりに進んで台湾に上陸し、9月29日には中国大陸で熱帯低気圧に変わりました。しかし、その後に温帯低気圧として再発達しながら黄海から日本海へと進み、10月2日にはサハリン付近に達しました。この影響で、北海道は広い範囲で暴風となり、10月2日の最大瞬間風速は5地点で40m/sを超えました。暴風の影響により、北海道の広い範囲で停電となり、住宅の損壊などの被害が多数発生しました。また、高波や高潮により、国道や道道の通行止め、JRの運休などが発生しました。
(過去天気:気象衛星画像 2015年9月28日)

8位 西日本冷夏 降水量も多く 鹿児島6月に1300.5ミリと過去最多

2015年の夏は、低気圧や前線、台風の影響を受けやすく、不順な天候となった西日本では、2年連続の冷夏となり、太平洋側を中心に降水量が多くなりました。6月は梅雨前線が九州南部に停滞しやすく、前線の活動も活発な状態が続きました。鹿児島では記録的な大雨となり、月間降水量は1300.5ミリと1883年の統計開始以来、観測史上1位になりました。7月中旬から8月上旬にかけては太平洋高気圧の張り出しが一時的に強まり、梅雨明けとともに、夏らしい暑さとなりましたが、8月中旬以降は、太平洋高気圧の張り出しが弱まり、夏空は続きませんでした。8月下旬には台風第15号の影響を受けて暴風雨となるなど、荒れた天気となった日もありました。

9位 北陸地方で大雪 福井県では数百台の自動車が立ち往生

2月9日から北陸地方の上空約5000メートルに大雪の目安となる氷点下36℃以下の強い寒気が流れ込んだ影響で、2月10日未明、北陸地方を中心に大雪に見舞われました。9日の8時には福井県の嶺南地方全域に大雪警報が発表され、敦賀では降り続いた雪のため、積雪が8日の3センチから9日37センチ、10日64センチと、2日間で60センチ以上の増加が記録されました。この大雪により、福井県敦賀市赤崎から滋賀県境近くにかけての幹線道路では、国道への交通集中や路面状態の悪化の影響で、約20キロにわたって大型トラックや乗用車など数百台が立ち往生し、正午過ぎまで車列が動かない状況となりました。
(過去天気:雨雲の動き 2015年2月9日)

9位 桜前線が最速でゴール 北海道 春の高温が影響

2015年の桜前線は駆け足での北上となりました。3月21日に鹿児島や熊本、名古屋でスタートし、5月6日には釧路や根室(※)でゴールを迎えました。5月6日のゴールは、1953年の観測開始以来、根室では最も早く、釧路では1968年5月6日に並ぶ最も早い記録でした。また、スタートからゴールまでの期間は46日間と1962年の47日間より短く、北上スピードも最も速い記録となりました。桜の開花は前年の秋から開花日までの気温が影響し、晩秋から初冬に冷え込み、春先に暖かくなると早くなります。3月の月平均気温は札幌や釧路、青森の八戸など20地点で高い方から1位の値を更新。釧路では4月の気温も1位を更新し、2015年の春は全国的に気温が高くなったことが桜の開花に影響しました。
※根室は、現在は気象台での観測は行っておらず、市役所での観測。

tenki.jpチーム

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