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日本気象協会が選ぶ 暑さに関する新しい言葉 ~tenki.jpラボVol.22~

[PR]2022年08月02日

最高気温40℃以上を観測した日や、夜間の最低気温が30℃以上の夜は何と呼ばれるのでしょうか。
気象庁の定義では、最高気温35℃以上の日を「猛暑日」、夜間の最低気温が25℃以上は「熱帯夜」としているものの、実はそれ以上の気温については定義されていません。
日本気象協会では、所属する気象予報士130名にアンケートをとり、40℃以上の日を「酷暑日(こくしょび)」、夜間の最低気温が30℃以上の夜を「超熱帯夜(ちょうねったいや)」と呼ぶことにしました。

※「酷暑日(こくしょび)」「超熱帯夜(ちょうねったいや)」は日本気象協会独自でつけた名称であり、気象庁が定義しているものではありません。
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最高気温40℃以上の日、最低気温30度以上の日の名称についてアンケートを実施!

ここ数年の暑さは体に応えるものがありますね。2022年は全国で観測史上初めて6月に40℃以上を観測し、今年の夏も各地で厳しい暑さが予想されています。

暑い日について気象庁が予報用語として定義しているのは、日最高気温が35℃以上の「猛暑日」までであり、最高気温が40℃以上になった日の名称は今のところ存在しません。
また、暑い夜についても夜間の最低気温が25℃以上の「熱帯夜」しか定義されていません。
ここ数年、40℃以上を観測する地点や夜間も気温が下がらない地点が多くなっていることから、暑さへの関心をさらに高め、熱中症予防の普及啓発・注意喚起を一層強化していく必要がありますね。

「酷暑日(こくしょび)」「超熱帯夜(ちょうねったいや)」に決定!

日本気象協会では「日最高気温が40℃以上の日」と「夜間の最低気温が30℃以上の夜」の名称を決めるため、所属気象予報士130名にアンケートをとりました。

その結果、日最高気温が40℃以上の日は「酷暑日(こくしょび)」、夜間の最低気温が30℃以上の夜は「超熱帯夜(ちょうねったいや)」と呼ぶことに決定しました。

そのほかのアンケート回答には「炎暑日」「灼熱夜」や「危暑日」「茹暑夜」などのユニークなものまで、さまざまな候補がありましたが、「すでにある「猛暑日」等との音・語呂のつながりの良さ」や「なじみやすさ」などを理由に、最も得票数を得た「酷暑日」「超熱帯夜」がそれぞれ選ばれました。

気象予報士からのコメント

日々メディアで気象情報を解説する、気象キャスターの方から、「酷暑日」「超熱帯夜」という新しい名称についてコメントをいただきました。

■天達 武史 気象予報士(フジテレビ「めざまし8」に出演)
「どちらもイメージしやすいですよね。特に近年は毎年のように40℃を超えて今年は6月にまさかの”酷暑日”。暑さの常識が変わってきました。今夏のヨーロッパの記録的な熱波も他人事ではない気がします。今後災害レベルの暑さとどう向き合っていくか?冷房が苦手な高齢者の夜間熱中症も心配です。私達の伝え方も重要ですね。」

■奈良岡 希美子 気象予報士(日本テレビ「日テレNEWS24」、読売テレビ「情報ライブミヤネ屋」、TBS「Nスタ」に出演)
「以前は稀にしかなかった最高気温40℃以上というのが、最近では珍しくなくなってきていて、猛暑日以上の表現が必要になってきました。寝苦しい夜も多くなっています。ただ、「酷暑日」や「超熱帯夜」という言葉が、真夏日や猛暑日、熱帯夜のように頻発するようにならないことを願います。」

■佐藤 公俊 気象予報士(NHK気象情報に出演)
「酷暑日は、ひどい意味の酷が入り、危険な暑さを感じます。超熱帯夜は、端的で分かりやすい言葉です。危険な暑さを伝える際に、新たな分かりやすい名称が加わるのは、伝え手として有難いです。今後こうした暑さがどの程度増えるかを注視し、危険を呼びかける表現もよく考え、酷暑を和らげる方法も伝えていければと思います。」

■岸本 慎太郎 気象予報士(tenki.jp YouTubeチャンネルに出演)
「「酷暑」という言葉は小学生の頃に学んだものの、「猛暑日」や「真夏日」という表現があるため、ほとんど使うことがありませんでした。新たに「酷暑日」が誕生することで、テレビやSNSを通して多くの方に今一度暑さの危険性を意識して欲しいです。気象予報士として、これからは「酷暑日」や「超熱帯夜」のような暑さを表す新語を用い、暑さへの注意喚起をしっかりとしていきます。」

日本国内の暑さの推移 ここ数年で「暑さ」に急激な変化が

これまで、国内で40℃以上を観測したのは、1875年の統計開始から32地点で計67回です。

記録が残っている中でもっとも古く40℃以上を観測したのは1927年7月22日の愛媛県宇和島で40.2℃です。
これ以降、2000年に入るまで40℃以上を観測したのはわずか8回に留まっていましたが、2001年以降の約20年で40℃以上を59回観測しています。※1
特に、2018年以降のここ5年で、合計40回の40℃以上を観測し、2020年には9月に、2022年は6月に40℃以上を記録しています。
これまでの国内最高気温の観測は、熊谷市(2018年)と浜松市(2021年)の41.1℃ですが、この記録もいつ破られてもおかしくない状況です。

一方、日最低気温が30℃以上の日(※2)は、北陸地方を中心とした11地点で計15回となっており、2019年8月15日に新潟県糸魚川市で観測した31.3℃が最高記録です。地点数と回数から考えると、最高気温40℃の壁よりさらに高い壁と言えそうです。
ただこちらもここ数年で記録回数が増加しており、いつ塗り替えられてもおかしくありません。

※1 観測精度の向上も40℃以上の観測が増加した要因の一つと考えられています
※2 1日を通して最低気温が30℃を下回らなかった日

酷暑日や超熱帯夜はこの先も増加か 熱中症に注意

この先も、酷暑日や超熱帯夜は増加すると考えられ、熱中症対策はより重要になってきます。
熱中症を予防するには、以下のポイントを心がけてください。

① 日頃から、体調管理を心がけましょう。朝など時間を決めて、毎日体温を測定したり、健康状態をチェックしたりすることにより、体調の変化に気づくことができます。

② できるだけ暑さを避けて、喉が渇く前から水分補給を心がけましょう。なるべく涼しい服装を心がけ、日傘や帽子も活用するのが効果的です。入浴の前後や、起床後も、まずは水分を補給しましょう。汗を大量にかいた場合は、水分だけでなく、塩分補給も忘れないでください。

③ 暑さを我慢せず、エアコンや扇風機を使って室内の温度を適度に下げましょう。室内に温度計を置き、こまめに室温を確認しながら調節するとよいでしょう。なお、感染症対策として換気を行う場合は、窓とドアなど2か所を開放したり、扇風機や換気扇を併用したりするのが、おススメです。換気後、エアコンの温度は、こまめに再設定してください。

もし、少しでも体調が悪いと感じたら、無理をしないで、自宅で静養することが必要です。高齢者や子ども、障がいのある方は、特に熱中症になりやすいので、周りの方が気を配るなど、十分ご注意ください。
<調査概要>
調査対象:日本気象協会所属の気象予報士130名
調査期間:2022年7月13日(水)~7月20日(水)


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