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台風で倒れた木から作られた器とは?『COCO no Ki(ココの木)』ブランド新発売

2014年12月04日

木の温もりを感じるココナッツの食器

地球温暖化、異常気象、猛暑の次は極寒と、季節に関係なくめまぐるしく自然災害が多発する昨今。振り返れば今年は日本も、これまで体験したことがないような集中豪雨を伴う台風に、次々と襲われました。昨年11月にフィリピンを襲った大型台風は、未曾有の規模で、被害も甚大。そんな深刻な被災の爪痕の中から、約1年の歳月を経てこの秋、倒木から作られたテーブルウェアブランド「COCO no Ki」が生まれました。
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■未曾有の大型台風ヨランダが倒したココナッツの木は、約3400万本

2013年11月4日にトラック諸島近海で発生した台風ヨランダ(台風30号)は、8日にフィリピン中部に上陸。竜巻に匹敵するような暴風と大波のなか、多くの死者や被災者を出す被害をもたらしました。フィリピンの農業経済を支えるココナッツ農園も深刻なダメージを受け、全土の10パーセント・約3400万本が根こそぎ倒壊。多くの農家がその生活の糧を失ったのです。以前の産業水準に戻るまで数年を必要とするとされるなか、今年3月に立ち上がったのが「ココウッドプロジェクト」。台風で倒れたココナッツの木を再利用した製品を作ることで、被災農家を継続的に支援する活動が始まりました。

■素朴な風合いに温もり漂うテーブルウェアブランドは、継続的な農家支援のために生まれた

この支援活動の担い手は、なんと日本の企業。もともとフィリピンの貧困問題の解決に貢献したいと設立された、ココナッツ専門店「ココウェル」です。「ココウッドプロジェクト」では、倒れたココナッツの木をカットし、根に近い堅い部分をいったん乾燥させてから、手作業で削って製品を作ります。そこで被災農家から希望者を募り、DTI(貿易産業省)の協力のもと、数か月に及ぶ技術トレーニングを実施。約30の農家が技を磨き、たくさんの試行錯誤を重ねた結果、ココナッツの木の堅くて水はけの良い特徴を生かしたカトラリーや食器が生まれたのです。

■人と地球に優しい“エシカル”な器たちが教えてくれる、日常の暮らしの大切さ

台風ヨランダからちょうど1年を迎える11月8日に発売されたのは、箸、スプーン、フォークなど全5アイテム(第2弾として、皿、ボウル、バターナイフなどが今冬発売予定)。落ち着いた風合いが、和の暮らしにもしっくり似合います。得られた利益のうち50%が、参加する農家の収入になるという「COCO no Ki」ブランド。環境に配慮する“エコ”、地球規模で生産者を支える“フェアトレード”、そして最近少しずつ耳にするようになった“エシカル”な商品としても、注目してみたいアイテムです。“エシカル”とは、「倫理的な」とか「道徳的」という形容詞。ものを増やすよりも、ものを減らすことが尊ばれる時代の流れの中で、買い物することで社会に貢献でき、人を幸せにできる商品の価値が高まっています。
手に取れば、木のあたたかさが伝わってくる「COCO no Ki」のアイテムたち。天災が生み出した器に込められた人々の想いが、日々を大切に暮らすことの大切さを、私たちに改めて教えてくれるようです。

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ライター

ゴトウヤスコ

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