文字のない絵本です。見開き画面の同じ位置に、1本の大木。雪が降り積もる冬から始まり、やがて木々が芽吹く頃。動物たちは冬眠から目覚め、鳥たちもやってきて巣作りです。明るい季節を経て、真っ赤に色づいた葉が舞い落ちる晩秋へ。木の実を集めたリスは冬ごもりの穴を掘り、鳥の家族は飛び去って…。
イエラ・マリさんは、字のない絵本の先駆者として知られる絵本作家です。『木のうた』『あかい ふうせん』『りんごとちょう』など、その作品は10冊に満たないのですが、芸術性の高さだけでなく科学性をも失わない絵本として世界中で愛読されています。文字がないからこそ、どの国の人でも、あかちゃんでも、見たままを自由に楽しむことができるのですね。四季とともに移り変わる木の姿と、そのまわりで暮らす生きものたちの営み。美しい絵だけでみちびかれる時間の流れは、ぐるりと廻って最初に戻り、不思議な精神性も感じさせます。
木のうた/イエラ・マリ(ほるぷ出版) 紅葉狩りしてみたい絵本は、ありましたでしょうか? 秋の夜長、どうぞ温かくしてゆったりとお過ごしくださいませ。
<参考>
『クレヨンハウス』公式サイト