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思い出すと背筋がヒヤッとする山行 – 岩崎元郎の山談義

思い出しても背筋がひやっとする、ホワイトアウト体験が2回ある。

五竜遠見尾根

1回はいまから半世紀以上前、昭和山岳会の現役バリバリ会員だった頃、1年先輩のAさんと1年後輩のS氏と3人で、ゴールデンウィーク明けに北アルプス五竜岳から鹿島槍ヶ岳の縦走をめざしたときのこと。

初日、遠見尾根を黙々と登って五竜山荘をめざす。残雪期、雪面は締まってアイゼンがよく効き、登高は軽快だ。小遠見山、大遠見山を越え、西遠見山を越えたあたりだった。

気がつくと湧いてきたガスがぼくらをすっぽり包みこんだ。ホワイトアウト、尾根は広い雪の斜面に吸収されて、進むべき方向が判断できない。

ガスが切れるのを待つしかない。ぼくらは行動を停止した。

ザックを下ろしその上にでんと腰をすえる。ひたすら待つ。

待つこと1時間、さっとガスが消えた。広い雪面の五竜山荘が確認できた。

さあ行こうと立ち上がった瞬間、ガスが湧いて再びホワイトアウト。しかし、もう大丈夫。山荘への方向は確認できた。

ひたすら登り、ぼくらは五竜山荘に飛び込んだ。

焼岳山頂

2回目は北アルプス焼岳山頂でのこと。

1981年5月、ニルギリサウスより帰国したぼくは、登山学校の必要性を感じ無名山塾を誕生させた。翌年5月、受講生募集の呼びかけに応じて入会してきた新人二人を伴って、焼岳から安房峠の縦走に出ていった。

初めての焼岳である。登山道は残雪に埋もれて良く分からない。

どのみち焼岳から先は登山道はないんだし、道にこだわらず尾根上を辿って焼岳に近ずいた。

焼岳本体は岩峰で、岩登りになる。山頂直下は岩場が立ってきて、ちょっとやばい。

用意していた6ミリ×10メートルのサブロープを2本出して結び、20メートルのロープにして腰に結び、直下をリードして山頂に立ち、二人をひっぱりあげる。

北峰山頂はガスに包まれてホワイトアウト、ぐるりと岩場でどっちに下っていけばいいのか分からない。

ザックを下ろし、その上にどんと腰を落とす。待つこと1時間、さっとガスが消え夏道が確認できた。

我々は無事、安房峠までの縦走を果たしたのである。

岩崎元郎(日本登山インストラクターズ協会会長/無名山塾主宰)

1945年東京生まれ。1963年昭和山岳会に入会し本格的な登山を始め、1970年に蒼山会を創立、1981年ネパール・ニルギリ南峰登山隊隊長、同年「無名山塾」を設立し登山者の育成を始める。1995年~1999年にかけてNHKテレビ「中高年の為の登山学」の講師を務め、日本百名山ブームの火付け役となる。多くの登山者と登山指導者を育てた登山指導の第一人者で、現在は「登山者と登山指導者の育成」と「安心安全登山の啓蒙活動」を進めている。著書多数。

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岩崎元郎の山談義シリーズ

NHKテレビ「中高年の為の登山学」の講師を務め、日本百名山ブームの火付け役となり、多くの登山者や登山指導者を育成してきた日本の登山界のレジェンド・岩崎元郎による、山談義。タメになる山のお話やエッセイを不定期に連載するコーナーです。

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