愛知の明治用水 取水施設のトラブルの原因は、川底の穴から水が漏れ出したからと考えられています。
5月16日午前に撮影された映像には、小さな渦が取水施設の水面に現れています。
(映像を撮影した 近所の市川さん夫妻)
「70年生きてきて、(こんなことは)ないです」
「(16日の)夕方には2メートル以上、水減ってましたんで、これは異常だと」
そして、これは市川さんが4月2日に撮影した、取水施設付近の風景。そこで、同じ場所を、5月20日午前に撮影したところ…水位が下がり、すっかり変わってしまいました。
また、別の人が撮った映像、16日午前の水面にできた「渦」ですが…午後になると、更に大きくなっていました。
これは、取水施設を挟んで上流の川底に空いた穴から、水が施設の下を通り、下流から大量に噴き出している状況で、専門家によると「パイピング現象」が起きたからと推測されています。
「パイピング現象」を理科の実験で説明します
中央で仕切った水槽に水と砂を入れます。横には穴をあけておきます。
左側を川に見立てて、水位を上げます。水と砂が噴き出しました。

断面を見ると、砂が押し出されて穴ができています。
では、水が砂を押し出す仕組みを見てみます。
注射器にインクを吸わせて水底に注入してみます。
早送り映像を見てみると、水位の高い方から低い方へ、水が砂の間を進むのがわかります。
水位差が大きくなると砂は浮いて、一気に崩れて穴が開きます。
去年7月、静岡県熱海市で起きた大規模土石流の現場。
「パイピング現象」は、この時に被害を拡大させた、盛り土の崩落原因と見られています。

大雨が降り、盛り土内にたまった大量の地下水が、盛り土の下の端から噴き出したのです。
「チャント!」大石アンカーマンとともに、熱海の土石流を取材した、名古屋大学減災連携研究センター 田代喬特任教授に、明治用水のトラブルについて伺いました。

(名古屋大学減災連携研究センター 田代喬特任教授)
「吸い込まれていくような水の抜け方を見ると、地下を介して、川の水がバイパスして、すり抜ける形で下流に流れているように見受けられる。水がそれだけ流れると、地面の土砂や細かい砂(が運ばれて)、穴そのものが大きくなり、水の流れる量が多くなる相乗作用が働き、どんどん流れる、漏れ出す水の量が増えている。堤防が壊れる原因にもなるが『パイピング』現象に近い」

取水施設のパンフレットによると、水底の地下には、水の流れをせき止める鉄の板を「遮水壁」として3か所設置。うち1枚は、岩盤部分まで到達しているということですが…
(名古屋大学減災連携研究センター 田代喬特任教授)
「遮水壁がきちんと機能していればここまでの漏水にはつながらなかったのではないか。遮水壁そのものに、何らかの損傷をきたし、ちょっとした亀裂や損傷でも、そこに水圧が集中すると、水の力で損傷が広がってしまう」

田代特任教授は、最初に異常を検知したら、できるだけ早く対策する必要性を訴えますが…
Q完全復旧は?
(名古屋大学減災連携研究センター 田代喬特任教授)
「非常に難しい問題。同じ場所にもっとしっかりとした施設を作るとなると、大きな川をせき止めて、別のルートで流さないといけない。これから先、梅雨入りした後、大規模に川をいじって作業するのは、かなり難しい」