雪崩はなぜ起こる?雪崩の種類や特徴、対策について解説 もし巻き込まれたら

雪崩が起こるメカニズム 危険個所は全国に2万か所以上も
雪崩(なだれ)とは、斜面に積もった雪が、重力によって下に滑り落ちる現象のことで、人の命を奪いかねない危険な現象です。
斜面に積もっている雪は、雪粒同士の結合しようとする力の他に、落下しようとする斜面下側に向かう力と、斜面上側に働く地面との摩擦力が釣り合う形となっています。雪崩は、この釣り合いが保たれている状況が、気温の変化や降雪、降雨、雪質の変化などの何らかの原因により、バランスが崩れてしまうことによって発生します。
雪崩の種類 表層雪崩と全層雪崩の違い

まず「表層雪崩」とは、斜面に積もっている古い雪の上に、新たに雪が積もり、この新雪部分の層が滑り落ちる現象です。発生しやすい時期は、寒さが厳しく、雪の降りやすい1月から2月頃にかけてです。強い寒気によって短期間に多くの雪が積もった時の他、南岸低気圧により大雪になった時などにも引き起こされます。雪崩のスピードは時速100~200kmで新幹線並みの速さです。
一方の「全層雪崩」とは、山に積もった雪が、全て滑り落ちる現象です。春先などの気温が上昇する時期や、雨が降った後、フェーン現象などで気温が上がった時などに多く発生し、斜面の上の固くて重い雪が全て流れるように滑り落ちます。雪崩のスピードは40~80kmで自動車並みの速さです。
雪崩が発生しやすい場所

中木や高木が密集している斜面では雪崩が発生しにくい一方で、低木林やまばらな植生の斜面では雪崩の危険度が高くなります。また、笹や草に覆われている斜面は、土がむき出しになっている斜面よりも雪崩が発生しやすい危険な斜面です。
また、過去に雪崩が発生したことのある斜面にも注意が必要です。
雪崩の前兆

新潟県土木部砂防課によると、次のような現象が現れたときに、なだれの危険があります。
・雪庇(せっぴ)
山の尾根からの雪のはり出しのことで、はり出した部分が雪のかたまりとなって斜面に落ちることによって、雪崩につながる危険があります。表層雪崩は雪庇ができている所で多く発生します。
・スノーボール
斜面をコロコロ落ちてくるボールのような雪のかたまりのことです。雪庇などの一部が落ちてきたもので、雪崩につながる危険があります。たくさんあるときは特に注意が必要です。
・クラック
斜面にひっかきキズが付いたような雪の裂け目のことです。積もっていた雪が緩み、少しずつ動き出そうとしている状態であり、その動きが大きくなると全層雪崩が起こる可能性があります。
・雪しわ
ふやけた指先のような、しわ状の雪の模様のことです。積もっていた雪が緩み、少しずつ動き出そうとしている状態です。積雪が少なくても起こり、全層雪崩が起こる危険があります。
そのほか、雪崩予防柵から雪がはり出していたり、斜面にもとの地形が分からないほど平らに雪が積もっていたりする場合にも、なだれの危険があります。
過去の事例 2017年3月27日の那須雪崩事故
2017 年3月27日には、南岸低気圧による大雪により、栃木県那須町で表層雪崩が発生しました。春山安全登山講習会に参加していた高校生らが雪崩に巻き込まれ、生徒7名、教員1名の8名が命を落とし、多くの人が重軽傷を負いました。
栃木県那須町にあるアメダス、那須高原(※)では、26日の夕方から弱い雪が降り始めたとみられ、27日未明から雪の降り方が強まり、雪崩が発生する朝までに30㎝以上の積雪を観測しています。
南岸低気圧による雪は、雪の結晶の周りに隙間が多く、表層雪崩の発生を引き起こす弱い層(弱層)を形成しやすくなります。当時の現地調査では、26日~27日の降雪中にやわらかな弱層ができ、その上に新たに雪が降り積もって積雪が不安定になり、弱層が壊れることをきっかけに滑り面となって表層雪崩が発生したと考えられています。
※那須高原のアメダスは、雪崩の発生したと推定される地点より標高が600m以上低い所にあります。
参考:国立研究開発法人防災科学技術研究所
雪崩に巻き込まれないためにできること
また、旅行などで豪雪地帯を訪れる際には、気象庁からなだれ注意報発表されていないかどうか最新の状況を確認したり、ハザードマップを確認したりして、危険な場所がないかどうか確認すると良いでしょう。
車を運転しているときなど、雪崩の前兆が見かけられた時には、大変危険ですので、決して近づかず、最寄りの市町村役場や警察署、または、消防署へすぐに通報するようにして下さい。
スキー場でスキーやスノーボードをする際は、決められたコースで楽しむようにし、コース外には出ないようにして下さい。
雪崩が発生した際の命を守る方法とは
万が一、自分自身が雪崩に巻き込まれてしまった場合は、可能な限り雪崩の流れの端に向かって横方向に逃げるようにし、身体から荷物を外すようにしてください。雪の中では泳ぐように雪をかき分けて浮上するようにし、雪が止まりそうになった時には、雪の中で呼吸ができる空間を確保するように、手や肘で口の前に空間を作って下さい。雪の上を歩いている人の声が聞こえる場合は、大声で助けを求めましょう。
自然は時に私たちの命を脅かす猛威を振るいます。雪崩や遭難に遭った際に命を守ったり、被害を最小限に抑えたりするためにも、雪崩ビーコン(雪崩の発生により雪の中に埋まってしまった人の捜索や救助をするために作られたトランシーバーの一種のこと)をなるべく持つようにしましょう。
最終更新者:下福 美香
出典:政府広報オンライン「最大で時速200㎞ものスピードに! 雪崩(なだれ)から身を守るために」