稲の若苗が伸び、田植えの準備が始まるころ。七十二候 「霜止出苗 (しもやみて なえいずる)」。
2016年04月25日
水口(みなくち)に花や焼き米を供える。稲の豊作を願って、苗代に種をまく日に。
田の神様(たのかんさあ)
春になると、山の神が里へ降りてきて田の神となり、農民の田んぼの作業を見守り、稲が順調に育つのを助けるといわれています。秋になって収穫が終わると田の神は山に帰り、再び山の神となります。
苗代に種もみをまく日、農民は苗代の水口(みなくち)に、焼き米や御幣、松の苗や木の小枝、ワラの束など、そして、依代(よりしろ)となる季節の花を供え、いい苗が育つようにと田の神に祈ります。供えるものは地方によってさまざまです。農家ごとにひっそりと行われますが、豊作を願う心はみな同じです。苗の出来によってその年の米づくりが左右されるので、苗代での苗づくりは、とても気を遣う作業でした。
苗代を作るころに咲く花々。ウツギの 「ウ」 は卯月の 「ウ」。
空ろな木だから「ウツギ」。
日本の唱歌「夏は来ぬ」でも歌われているウツギは、茎や枝の芯が空洞なので、「空木(うつぎ)」と書きます。別名は「卯の花」。ウツギの「ウ」をとって「卯の花」と名づけられました。旧暦の4月が「卯月」と呼ばれるのは、卯の花が咲く時期だから。
豆腐の「おから」は「卯の花」と呼ばれます。「おから」をウツギの白い小さい花に見立てたためだといわれていますが、「おから」が「お空(から)」、つまり、空っぽを連想させるのはよくないということで、「卯の花」と呼ぶようになったともいわれています。また、ウツギの茎が空洞で空っぽなので、おからの「空(から)」に通じるから、という言葉遊びだとも考えられています。
ウツギの花言葉は「秘密」「古風」「秘めた恋」など。苗代を作るころに咲く花として古くから親しまれいて、苗代の水口に供えられることも多いようです。
桜が咲いたら田んぼの準備が始まる。苗代を作るころに咲く 「苗代桜」。
満開のころの「発知の苗代桜」。
群馬県沼田市の発知(ほっち)地区。あたりを見渡す高台に一本の大きな彼岸桜が咲いています。樹齢は300年以上。桜の周りは「発知田んぼ」と呼ばれ、田んぼが広がっています。高台に咲く一本桜なので、平地のどこから見ても、その堂々とした姿を目にすることができます。ちょうど苗代を作るころに花が咲くので、「発知の苗代桜」と呼ばれ、多くの人に親しまれています。
春になり高い山々の雪もとけて、残雪と岩肌がまだらになると、山肌の模様が何かの形に見えてきます。これは「雪形」とよばれ、この形を見て昔の人々は、土を耕したり、田植えを始めたり、豆を撒いたりしてきました。桜が咲いたら苗代を作る、残雪の形が馬になったら田植えを始める…。昔の里人は、季節の移ろいとともに米づくりを始めていました。
田植えの時期は地方によってさまざまですが、秋の豊作を祈りつつ、今年も各地で米づくりが始まりました。