【冬至次侯 麋角解(さわしかつのおる/びかくげす)】
ほとんどの歳時記や辞書で「大鹿の(またはヘラジカ、トナカイの)角が落ちる頃」としていますが、「大鹿」とは何を指しているのか不明で、中国中原地域の気候や自然生物が基本である七十二候で、トナカイやヘラジカが出てくるのも変です。古くは中国に多く生息し、この時期に角を落とす、アカジカよりも大きな鹿。それは中国名で麋鹿(ミールー)と呼ばれ、日本では「シフゾウ(四不像)」として知られている生物のことです。つまり意味は「シフゾウの角が落ちる」。
ところで、本朝七十二候を編纂した渋川春海は、宣明暦の七十二候に登場する日本にはいない生き物を、日本にいる生物に書き換えました(例・虎始交→熊蟄穴)が、なぜか日本にはいない麋のみは残しました。これについては、西村遠里が「麋角解とはカモシカの角が落ちること」と解説していて、どうも麋のことをカモシカのことであると、彼らはは思い込んでいたようです。当然カモシカは角は生え変わりませんので、この解説は間違いです。カモシカの生態について、江戸時代当時の人はあまり詳しくなかったようです。このことについては、いずれ詳しく書こうと思います。
この他にも、まだいくつか、解釈に問題のある候(たとえば「紅花栄」)がありますが、新しい一年のめぐりの中で、それらの候についても触れていけたらと思います。
鳥インフルエンザウイルスの状況に伴い一部の鳥類の展示を中止します/上野・多摩・葛西・井の頭 2018/01/17図録・世界の家畜数