日本気象協会 tenki.jp

つららはなぜできる?仕組みや注意点、幻想的な氷の絶景を紹介

2025年12月16日

雪国ならではの冬の風物詩「つらら(氷柱)」。軒先に無数に連なったつららや、長く伸びた立派なつららには思わず感心してしまいますが、落下による事故の危険性もあるため注意が必要です。
この記事では、つららの定義や名前の由来、できる仕組みと条件、安全面での注意点や対策について解説します。

さらに、つららは軒先にできるだけではありません。巨大な氷柱群や氷筍(ひょうじゅん)・氷瀑(ひょうばく)といった、ユニークかつ魅力的な形のつらら、そして全国の美しい「つららスポット」もご紹介します。
ポイント解説へ

つららの定義と名前の由来 方言はなんと200種類以上!?

軒先にできたつらら

「つらら」とは、建物の軒先や岩場などから棒状に伸びた氷のことです。雪が積もった屋根の下に垂れ下がるその姿は、雪国ならではの風物詩の一つです。建物以外にも、地下水が滲み出ている場所などでも見ることができます。

<つららの由来>
漢字では「氷柱」と書きますが、この「つらら」という名前の由来には、連なって垂れ下がるようすからという説や、つるつると光沢があるものをそのように呼んでいたという説があります。

全国のつららの方言(国立国語研究所「日本言語地図」第6集 第262図より)

<つららの方言>
さらに、つららは全国各地に別の呼び名(方言)があり、タルヒ(東北の一部)、アメンボー(関東甲信の一部)、カネコーリ(北陸などの一部)、マガンコ(福岡などの一部)、ビードロ(鹿児島、茨城などの一部)など、さまざまな名前で呼ばれてきました。国立国語研究所の「日本言語地図」によれば、「アメンボー」と「アマンボー」といった微妙な発音の違いも含めると、つららの方言はなんと230種類ほどあるそうです。
タルヒは「垂(た)れる氷(ひ)」、アメンボーは「雨(あめ)の棒(ぼう)といったように、いずれも、それとなくつららを連想させる名がつけられているのも面白いですよね。

つららができる仕組みと条件

つららのでき方

<つららができる仕組み>
つららは、雪が溶けるなどして水が垂れるとき、氷点下の外気によって凍ります。先にできた氷の周りを、次の水がつたいながら凍って、つららを太くしていきます。
パッと見、棒状に見えるつららですが、実はその先端は管のようになっていて、外側だけが凍って水滴がぶら下がった状態の不思議な構造をしています。この水滴が滴り落ちようとしたとき、冷たい空気に触れた外側が凍り、そこから徐々に内側へと凍って、つららが伸びていきます。
この過程を繰り返しながら、つららは太く長く成長していきます。

<つららが成長する条件>
建物にできるつららの場合、積雪量が多く、寒暖差が大きいと、つららは成長しやすくなります。
まず、雪が多ければ、つららに水分が供給されやすくなります。
そして、その雪が解けて凍ってを繰り返すために必要なのが「寒暖差」です。雪を解かす”暖”には、日中の気温上昇や日射に加えて、建物内の暖房による熱も大きく影響します。暖房の熱が屋根を暖めて雪解けを促し、その水が、夜間や早朝に気温が氷点下になること(=”寒”)で凍ります。
このため、昔の住宅と比べると、断熱性能が高い最近の住宅では、大きなつららができにくくなっているようです。

要注意!つららの危険性と落下対策

つららの落下対策

軒先のつららは、ときには数メートルもの長さになることもあります。
見ている分には「わー!すごい!」などと感心してしまいますが、巨大なつららが落ちたときの衝撃はかなりのもので、下にいる人がケガをしたり、下にあるものが破壊されたりするおそれがあります。

特に、気温が上がったとき(-3〜3℃くらい)には落下の危険性が高まるため、十分に注意してください。万が一に備えて、しっかりとつららの落下対策をしておきましょう。

<歩行者の場合>
歩行者の場合は、つららがある軒下などには、近づかないようにしましょう。
興味本位で近寄ったり、スマホに夢中になって上を見ずに歩いてしまったりということがないようにしてください。また、つららがある建物のそばでは、子供を遊ばせないように注意しましょう。

<家の持ち主や建物の管理者の場合>
建物や家屋の持ち主の場合は、つららが落ちないようにするか、その場所に近づけないようにしておくことが大切です。
自身や周囲の人の安全を確保した上で、早めに雪落とし・つらら落としをしておきましょう。また、つららが落下する危険がある場所には、人が立ち入れないようにしておくのも方法の一つです。

魅力もたくさん!氷筍・氷瀑などつららが生み出す氷のアート

さまざまなつらら(左上:曲がったつらら、右上:白川氷柱群、左下:袋田の滝の氷瀑、右下:百畳敷洞窟の氷筍)

もちろん、つららは危険なだけではありません。さまざまな形や大きさで、私たちを楽しませてくれます。
ここからは、自然が作り出すつららのアート作品たちをご紹介します。

◆曲がったつらら
つららは、真っ直ぐに伸びるだけではありません。屋根の雪がだんだん落ちて根本の向きが傾いたり、風が吹きつけた影響で、つららが曲がることがあります。

◆地下水が作り出す氷のカーテン「氷柱群」
岩壁などから地下水が染み出して凍り、巨大なつららがカーテンのように連なった「氷柱群」。その景色は、さながら氷の神殿のような美しさです。
三十槌の氷柱(埼玉県秩父市)や白川氷柱群(長野県木曽町)などが有名です。

◆地面からのびる「氷筍(ひょうじゅん)」
洞窟などで、上からしたたり落ちる水が凍って、地面から伸びる逆さまのつららができることがあります。まるで筍のようなので、「氷筍」と呼ばれます。
百畳敷洞窟(北海道伊達市)、鳴沢氷穴(山梨県鳴沢村)などで見ることができます。

◆滝が凍ってできる巨大な「氷瀑(ひょうばく)」
つららに似ていますが、厳しい寒さが数日間続き、滝全体が凍ったものを「氷瀑」といいます。近年は完全凍結しない場所も増えているようですが、滝が丸ごと凍った景色はとても迫力があります。
有名な場所としては、奥入瀬渓谷(青森県十和田市)、袋田の滝(茨城県大子町)、御船の滝(奈良県川上村)、古閑の滝(熊本県阿蘇市)などがあります。
いかがでしたか?
つららは、冬の厳しさが生み出す自然の造形美であり、一方で危険と隣り合わせの存在でもあります。正しい知識と対策を知ったうえで、安全に冬の景色を楽しみたいですね。
寒い季節ならではの氷のアートに、ぜひ注目してみてください。

関連リンク

気象予報士/熱中症予防指導員

瀬田 繭美

このライターの記事一覧
ライター一覧