日本気象協会 tenki.jp

普段の生活に防災備蓄を取り入れよう ローリングストックについて解説 #知り続ける

2022年03月06日18:00

日本気象協会 本社安齊 理沙

災害時に備える考え方として、ローリングストックというものがあります。東日本大震災からもうすぐ11年が経ちますが、いざという時に落ち着いて正しい行動ができるように「知り続ける」ことが大切です。

ポイント解説へ

災害発生時 1人最低3日分の備蓄が必要

東日本大震災から11年が経ちますが、災害はいつ発生するか分かりません。災害が発生した時に必要な物は何か、日頃から考えておく必要があります。
防災対策で一番大切なことは命を守ることですが、避難生活が長期に及ぶ場合はいかに体調を維持するかが重要になり、非常食の備蓄についても考えなければなりません。

農林水産省によると、非常食の備蓄は、災害発生当日の1日分、行政からの公的物資などが届くまでの3日分、食料の供給が滞る場合の1週間分と、3段階で行うとよいとされています。最低でも1人3日分、できれば1週間分の食料品を備蓄しておきましょう。

生活の中に備蓄を取り入れる ローリングストック

非常食の備蓄というと、保存期間が3年、5年と長いものや、乾パン、水、缶詰など、日常の食料品とは別に保管すると考える方が多いかもしれません。そのため、気がついたら賞味期限が切れていたということも。
そうしたことを防ぐために、日常の生活の中に非常食を取り込むと「ローリングストック」という備蓄方法があります。

ローリングストックとは、非常用のためだけに食材や生活用品を備蓄するのではなく、普段から食べているものや消耗品を少し多めに買っておき、使ったら使った分だけ新しく買い足していくことで、常に一定量の食料や生活用品を家に備蓄しておく、循環型の備蓄方法です。消費しながら備蓄することができるので、備蓄用品を一定量に保ちながら、災害時にも日常に近い生活を送ることができます。

このローリングストックは、食品だけではなく、トイレットペーパーや衛生品、乾電池やカセットボンベなど生活に必要な日用品でも実践できます。また、テントやランタン、寝袋といったアウトドアグッズも、普段はレジャーに、災害時には防災グッズとしてそのまま活用できます。
あらゆるものにおいて、日常と災害時の垣根を低くして、普段使っているものがそのまま災害時にも活用できる、という考え方が大切になります。

ローリングストックのメリット

ローリングストックのメリットとして、災害時でも食べ慣れたものを安心して食べることができる点があります。食べながら備えるため、保存期間が短い食品(半年から1年程度)も活用できるという点もポイントです。

家族の中に妊婦や乳児、高齢者や病気にかかっている人、アレルギー体質など、食事の配慮が必要な方がいる場合もありますが、災害時の食料支援があっても、食材の制限があるなどで食べられない事もあり、場合によっては命に関わる事にもなりかねません。
一方、ローリングストックでは、備蓄できる食材の範囲が幅広く、食事の配慮が必要な場合でも、普段から食べ慣れた食材を活用することができます。家族ひとりひとりに合わせた食材を準備でき、食事の面から心の健康を保つことができるので、結果として家族の健康や命を守ることにもつながります。

ローリングストック 上手な活用ポイント

ローリングストックを上手く継続させるには2つのポイントがあります。

■古いものから使う
備蓄分が期限切れならないように、消費する時は必ず一番古いものから使うようにしましょう。各家庭それぞれに合った備蓄方法で上手に循環させることが大切です。

■使った分は必ず補充する
ローリングストックでは、備蓄品としてストックしているものはいつ食べても構いませんが、消費した量を必ず買い足すようにしましょう。ちょっと補充を怠ったタイミングで災害が来る可能性もありますから、消費した分の補充は必ず直後に行いましょう。

カセットコンロで暖かいものを調理 非常事態でも普段食べ慣れたものを

これまでの非常食は「開封してすぐに食べられる」ことが前提でしたが、調理することにより、備蓄する食材の幅が広がり、食事の配慮が必要な場合にも対応しやすくなるとともに、温かい食事を食べることができます。
しかし、災害時は電気・ガス・水道などライフラインが途絶えている場合があり、調理条件が限定されます。そんな時役に立つのが「カセットコンロ」です。過去の災害で被災された方の多くが「避難生活の際に温かいものが食べたかった」と語っています。
ローリングストックでは、非常時用の保存食だけを備蓄しているわけではないので、それらの備蓄品を活かすためにもカセットコンロとガスボンベを用意するようにしましょう。

非常食は、災害など非常事態が起こった時に食べるものですが、決して特別なものではありません。備蓄していても普段食べたことがないものは、いざという時に食べ方が分からず、役に立たないことがあります。
そのため、非常食は「できるだけ普段の食事に近い食事ができるように備蓄する食料品」であることが重要です。災害時は精神的な不安やストレスから食欲がなくなることもあります。そんな時に、ストレスを和らげ、安心感を与えてくれるものが何かを知っておくことがとても大切です。いざという時のために、普段から防災備蓄を生活の中に取り入れていきましょう。


この記事は日本気象協会とYahoo!ニュースによる共同連携企画です。東日本大震災から10年が過ぎましたが、その時の教訓を絶対に忘れてはなりません。普段からの備えや災害発生時の行動について、皆さんで「知り続ける」ようにしていきましょう。

最新の記事(気象予報士)

関連リンク

日本気象協会 本社気象予報士/防災士/熱中症予防指導員/全米ヨガアライアンス(RYT200)

安齊 理沙

安齊 理沙の記事一覧