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9月の満月は収穫を告げる「コーンムーン」 2025年は皆既月食やブラッドムーンも

2025年09月01日

今年2025年9月8日の満月は「コーンムーン」と言います。また今年は皆既月食も楽しめます。さらに月と土星の共演も。今回はコーンムーンの意味や由来、皆既月食の観察ポイントなどをご紹介します。
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コーンムーンとは

今年2025年9月8日の満月は「コーンムーン」と呼びます。「コーンムーン」は、北米の先住民・ネイティブアメリカンがそれぞれの満月に名前をつけたのが由来です。農作業や狩猟、季節の変わり目を月の満ち欠けと結び付けて暮らしており、それぞれの満月に名前を付けていました。名前をつけることで、農作物の種まきや収穫、狩りの時期を知るための”自然のカレンダー“の役割を果たしていました。

例えば、
1月はウルフムーン(オオカミの遠吠えがよく聞こえる季節)
4月はピンクムーン(野生のフロックスの花が咲く時期)
7月はバックムーン(牝鹿の角が生え変わる時期)
12月はコールドムーン(北半球で冬の寒さが本格化する時期)
などと、月ごとに呼び名があります。

そして9月はとうもろこしの収穫期にあたることから「コーンムーン」と呼ばれました。こうした満月の名前は、天文学だけでなく、自然や文化、農業と深くかかわっており、現代の私たちに季節のリズムを感じさせてくれます。

ハーベストムーンとの違いは?

このコーンムーンとよく混同されるのが「ハーベストムーン」です。どちらも秋の満月につけられた呼び名ですが、その定義と由来には明確な違いがあります。

ハーベストムーンは、「秋分に最も近い満月」を指します。「秋分」は昼と夜の長さがほぼ等しくなる日で、農作物の収穫期とも重なります。このため、ハーベストムーンは農業にとって特に重要な月として、世界各地で意識されてきました。

2025年の場合、秋分は9月23日、満月は9月8日です。満月から秋分まで半月以上離れているため、9月8日の満月は「コーンムーン」になり、ハーベストムーンは翌月10月7日の満月になります。つまり、2025年は、コーンムーンとハーベストムーンが別々に現れる年になります。

ほとんどの年が9月の満月「コーンムーン」が秋分に最も近い満月で、「コーンムーン」=「ハーベストムーン」になりますが、2020年は2025年と同様に10月の満月が「ハーベストムーン」でした。次回は2028年になります。

このように、その年の秋分の日と満月の日によって、ハーベストムーンとコーンムーンが同じになる年もあれば、別々になる年もあるのです。

2025年の見どころ「3年ぶりの皆既月食」「月と金星の接近」

2025年のコーンムーンは9月8日午前3時9分に満月の瞬間を迎えます。さらに今年は特別に、皆既月食が同時期に起こります。皆既月食は2022年11月8日以来、およそ3年ぶりに日本全国で見られます。欠け始める(部分食)は午前1時27分から始まり、完全に月が地球の影に入る、皆既食の始まりは2時30分、最大食は午前3時12分で、3時53分に終わります。その間、月が赤銅色(しゃくどういろ)に染まる「ブラッドムーン」を楽しめます。

そしてもう一つの楽しみは、月と土星の接近です。月は、9月8日未明に皆既月食が終わり、沈んだ後、夕方に再び東の空から昇ってきます。するとすぐそばに明るい星が見えるでしょう。それが土星です。ぜひ9月8日は、未明に皆既月食を楽しんだあと、夜には土星と月の共演も楽しむと良いでしょう。

日本の月見文化とのつながり

日本では、旧暦8月15日の満月を「中秋の名月」と呼んで、月見団子やススキを備えて鑑賞します。9月の満月=中秋の名月のイメージがありますが、実は毎年日付は変わります。昨年2024年の中秋の名月は9月17日で満月の1日前でしたが、今年2025年の中秋の名月は9月ではなく、10月6日で、満月の1日前になります。

ただ、コーンムーンも同様に、収穫を祝う意味を持つ点で共通しています。異なる文化であっても満月を季節の節目として大切にする心は同じかもしれません。今年はコーンムーンの夜に、月を見上げながらとうもろこし料理を味わえば、自然の恵みをより深く感じられる特別な時間になりそうです。塩ゆでしたとうもろこしや、バター醤油を絡めた焼きとうもろこしが定番ですが、冷製のコーンスープやたっぷりのコーンを入れたバターコーンご飯なども良さそうですね。

コーンムーンは、9月の満月を彩る美しい呼び名であり、農作物の収穫や季節の節目を示す自然のサインです。2025年はこのコーンムーンが皆既月食やブラッドムーン、土星接近といった天文イベントと重なり、特別な夜空を演出することでしょう。

今年のコーンムーンは、ぜひ空を見上げ、その物語とともに楽しんでみてくださいね。

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[日本気象協会]/気象予報士/熱中症予防指導員/京都検定2級/着付け講師

小野聡子

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