ところで「しぶんぎ」って、いったい何なのでしょうか?
漢字で書くと「四分儀」。現在の星座にもある「ろくぶんぎ」「はちぶんぎ」の仲間で、扇形の円周部に角度の目盛りがついている道具です。天体の地平線からの高度などを測定するのに使われていました。
中世末から近世のはじめごろの絵には、扇形の機械を使って星をのぞいている天文学者がよく描かれています。円周4分の1の扇形なので「四分儀」または「象限儀」。大型で目盛りが壁面の一部についているものは「壁面四分儀」といい、しぶんぎ座も もともとは「壁面しぶんぎ座」と呼ばれていたそうです。
1731年にはハドレーが、円周の8分の1(45度)の扇形をもつ「八分儀」を作り、のちに改良されて6分の1(60度)の「六分儀」に。近代の六分儀は、大航海時代の船乗りたちにとって不可欠の道具でした。彼らは太陽・月・惑星・恒星などの、水平線からの高度を計測し、その角度と正確な時計が示す時刻とから、船の位置を正確に測定することができるようになったのです。今世紀に入って飛行機が発達すると、洋上飛行の場合にはやはり六分儀による天測で自機の位置を把握していました。
現在航海用に用いられている六分儀は、扇形の円周につけた目盛りに、平面鏡と小望遠鏡を取り付けてあり、片手で取り扱えるくらいの小型の機械となっています。電気に頼らず、GPS衛星のような人間が制御するものにも依存していないことから、六分儀は航行装置の重要なバックアップとしての役割を担っているそうです。
「しぶんぎ」は、人類が未知の世界へと漕ぎ出すために不可欠だった観測機械の原型。現在もなお名前が用いられているのは、その価値の証しなのかもしれませんね。
※『天文学辞典「六分儀」』(日本天文学会)は
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