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    【犬の防災】避難所にはワクチン証明書を持参!離れても再会できるかは身元表示次第…震災の教訓から飼い主が備えておきたいこと

    2025年09月26日07:00

    日本に住んでいれば、地震や水害などの災害を避けて通れない。犬の飼い主は災害に備えてどのような準備をしておくべきだろうか?多くの被災地でペットの支援活動を行ってきたNPO法人アナイス理事長の平井潤子さんのインタビューと、平井さんが監修した『決定版 犬と一緒に生き残る防災BOOK』(日東書院本社)から紹介する。

    「逃げ込める場所」を確保して

    「災害への備えや災害時の基本的な行動は、犬を飼っている人もいない人も同じです。住まいの耐震を見直したり、ハザードマップを見て自宅周辺のリスクを確認して、避難経路を確認する。そういった日頃からの準備と心がけが大切です」

    飼い主が安全に過ごせる状況が確保できていれば、それは一緒にいる愛犬の安全にもつながるというわけだ。そのうえで、さらに愛犬のためには、「災害時に逃げ込める場所」を自宅に準備してほしいと話す。

    「押入れの一角などの安全な場所に頑丈な家具やハウスを置いて固定し、普段から、犬が怖いと思った時に逃げ込める場所(生存確率を上げる場所)を作っておきましょう。頑丈なクレートタイプのキャリーを使ってもかまいません。そうすれば飼い主さんの外出中に何か起こっても、犬はそこに入りますから、家具の転倒やガラスの飛散から逃れられる可能性が高くなります」

    避難先は「複数」想定しておく

    さらに平井さんは、非常時には様々な想定外の事態が起こるため、複数の避難先を確保しておくことを強く勧める。

    「東日本大震災の時に私が遭遇したケースでは、ペット受け入れ可能の予定だった避難所で、近くに大きな病院の入院患者の皆さんが避難してきたため、動物の同伴ができなくなってしまったということがありました。いくら事前に自治体に確認しても、災害時には全てが予定どおりにいくわけではないのです」

    そんな事態に備えて、親戚などの信頼できる人がいれば「いざという時は、この子を預かってもらえるかな」と、平時からお願いしておくといいだろう。ペットホテルや動物病院で一時預かりをしてくれる場合もあるので、近隣の施設の情報もチェックしておきたい。

    家の中で安全が確保できる場所があれば、犬だけを自宅に残し、飼い主は避難所から家に通って犬の世話をするという方法もある。離れて暮らすのは心配だが、避難所に入ったとしても、犬にとっては避難所生活が人間以上にストレスだったりする。犬と人の両者にとって何がベターなのか、臨機応変に考えることが必要だ。

    「それがダメなら次はこっちと、様々な事態を想定し、その時にはどのように行動するべきか。平時からシミュレーションして対策を立てている人ほど、災害時にも落ち着いて行動されていると感じます」

    犬のために準備しておくもの

    非常時に必要なものも準備しておこう。

    まず愛犬の命を守るのに最優先で準備しておきたいものは、ドッグフード(特に療養食)と持病の薬だ。

    「支援物資は人間が優先。東日本大震災の時、仮設住宅で避難生活を送っていた方に調査したところ、発災後の半年間に1回もペット用品は来なかったという地域もありました。ですからフードは最低でも1カ月分は常にローリングストックで備蓄しておくことをお勧めします」

    ローリングストックとは、フードなどを少し多めに買っておき、賞味期限の近いものから普段のご飯として使い、新しく買い足して常に一定量を備蓄する方法。

    そして、同行避難をすることになった場合に欠かせないのは、キャリーバッグとリードまたはハーネスだ。

    災害時の避難の基本は徒歩となる。

    その際、小型犬は徒歩で連れて歩くよりも、キャリーに入れて運んだほうが素早く移動できる。移動の際には両手が空くように、リュックタイプか肩掛けできるものにして、避難所で生活するために必要なクレートは、いったん避難した後からでも持ち出せる場所に保管しておくのも一案。

    中・大型犬の場合はリードかハーネスを付けて一緒に歩いて避難する。その際、可能なら靴を履かせると、飛散したガラス等によるケガを防げる。予備のリードやハーネスも用意しておくとよい。なおロングリードや伸縮リードは事故につながる恐れがあるのでノーマルタイプがお勧めとのこと。

    避難所によっては、狂犬病などのワクチンの接種証明書の提示を求められることもある。

    「とっさの状況ではなかなか接種証明書まで気が回らないでしょう。そこで、各種の接種証明書や飲ませている薬などは、スマホで撮影して保存しておくことをお勧めします」

    身元表示とワクチン接種も忘れずに

    「普段から備えてほしいのはモノだけではありません」と平井さん。

    災害時には、犬が脱走して離ればなれになることも考えられるため、首輪には鑑札と狂犬病予防注射済票を付けておきたい。マイクロチップや迷子札も装着しておくと迷子になった時に役立つ。

    環境省がまとめた『東日本大震災における被災動物対応記録集』(2013年発行)によれば、東日本大震災の被災地10県市で保護された犬で、なんらかのかたちで所有者を記したものを身に付けていたのは689頭。うち、鑑札・狂犬病予防注射済票(片方または両方)あるいは迷子札を付けていた85頭は全頭飼い主が判明。一方、首輪のみを装着していた604頭のうち、飼い主が判明したのは85頭で14%だった。  

    混合ワクチン接種や寄生虫予防などもしておいたほうがいい。

    「避難所に入れてもらえないという事態を防ぐという目的に加えて、自分の愛犬を守るためでもあります。避難所には多くの犬が集まってくる。他の犬から病気をうつされたりするといった事故が起こる可能性もあります」

    平井さんは言う。

    「いざ被災した時、もちろん避難所の運営やボランティアといった支援者たちは精一杯支援しますが、それを当てにしすぎるのもあまりよくないと思うんです。自分の愛犬を守るという覚悟があれば、当然、災害時の危機管理も意識するようになります。それが判断力を養うことにも繋がり、いざという時に正しい判断を下せるようになる。私はそう思っています」

    平井潤子(ひらい・じゅんこ)
    人と動物の防災を考える市民ネットワーク、NPO法人アナイス代表。緊急時に飼い主と動物が同行避難し、人と動物がともに調和して避難生活を送ることができるよう、知識と情報の提供を行っている。

    取材・文=青山 誠

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