夏には緑あふれていたイチョウ並木が黄葉すると、その地域全体が黄金一色に染められたように感じます。これこそがイチョウの美しさの真骨頂ともいえるでしょう。落ち葉となって地面に降り積もった木々の葉も、一枚一枚を見るとどれをとっても同じ黄色。葉っぱ毎にその色合いの変化が楽しめる楓とはひと味違う美しさがあることに気づきます。
その秘密は夏のイチョウの葉の緑色にあるのです。緑色の色素は「クロロフィル」、これが夏の葉の色となっています。じつは秋の黄色となる色素「カルテノイド」も、すでにこの時葉の中には作られているのです。緑と黄色ふたつの色素を同時に持っていますが、秋になるまで黄色の「カルテノイド」は濃い緑色に負けて目立つことができないのです。
秋になり気温が下がり寒さに弱い「クロロフィル」が分解され消えていくと、黄色の「カルテノイド」の出番というわけです。黄色に変わるというよりは、緑がなくなり黄色が現れるというのがイチョウの黄葉の姿なのです。すべての葉を等しい黄色にしているのは「カルテノイド」色素というわけです。
〈金色のちひさき鳥のかたちして銀杏ちるなり夕日の岡に〉与謝野晶子
イチョウ黄葉の迫力は圧倒的な黄色の集合体にあります。特に並木となったイチョウには、空のてっぺんから大地まで一気に黄金世界を作り出す神秘のチカラを感じます。11月も後半に入りイチョウの美しさがいよいよ増していきます。降りそそぐ葉の輝きを存分に楽しみながら、イチョウの木の生命力を感じにいきませんか。
参考:
<「秋の“黄葉”のしくみ」理数啓林 No.16>