恐竜スター軍団の中でも、ダントツの知名度と人気ナンバーワンの地位をほしいままにするティラノサウルス。最大級の肉食恐竜であるティラノサウルスの姿は、バナナのような牙が並ぶ巨大なあご、強靭な後肢、太い尾と比べて、アンバランスなほど極小の前足が特徴。その骨格は翼のない巨大な猛禽のようであり、現世のトラやヒョウ、ライオンといった猛獣とはだいぶ姿が異なります。ですから現代の猛獣たちがその力強い四肢で獲物を追いかけ、強力な前足の爪でとらえて引き倒すのとは、まったくちがう捕食の仕方をしていたことはたしかですが、どういう狩りをしていたのか、まったくわかっていません。以前は、その大きな体では早く走れないから獲物を捕らえることはできず、死肉をむさぼるスカベンジャー(掃除屋)だったのだろうとか、あるいは最近の説ではまだ体の小さな若い個体が狩りをしたのだろうとか、苦しい想像をするしかないのが現状です。
姿勢も、大きな頭部と太い尻尾で前後でバランスを取る、地上とほぼ平行の低い姿勢を取っていたというのが現代の定説ですが、それもおかしな話です。バランスを取るために姿勢を低くするのなら、四足で体を支えるほうが無理がありません。ティラノサウルスの前足が退化したのは、前足を必要としない生態をしていたから、と考えるべきです。ティラノサウルスの狩りは、水に潜んでいきなりかぶりつくワニと、上からかぎ爪で急襲する鷲の両方、上下移動の動きでの狩りに特化したものだったのではないでしょうか。ただし、潜んでいたのは水ではなく白亜紀の濃厚な霧の中。地上数メートルを覆いつくす視界ゼロの濃霧にひそみ、頭部の敏感な触覚と嗅覚をたよりに獲物を探し、地を這うものは鷲のように後肢で押さえつけて牙でとどめをさし、頭上を飛ぶ翼竜は、その力強い後肢で飛び上がり、まさに水から突然飛び出すワニのように一気にかぶりつく。
このように考えれば、ティラノサウルスの巨大化は狩りに有利であり、なおかつ前肢という武器を必要とせずに狩りができたはずだ、と筆者は考えます。
いずれにしても、かつてのゴジラのような直立した怪獣スタイルから、現頭の大きなダチョウのようなスタイルへと現在は変化していますが、この想像図もいずれ書き換えられるようになることでしょう。
日本での恐竜研究のメッカといわれる福井県立恐竜博物館では今日、4月17日の恐竜の日にちなみ、入館無料となっています。ジオラマ模型や、実物の化石を数多く展示しています。古代の謎の生物について、ああでもないこうでもないと空想をめぐらすのも、きっと楽しいことでしょう。
福井県立恐竜博物館