約1万年ほど前に、中国の西南部、長江付近で産した梨は東西に広がり、西に至った梨は卵型、またはだるま型の洋梨となり、東に至った梨は日本で和梨となりました。日本には弥生時代ごろに伝わってきて、その時代に栽培されていた痕跡が残っています。
「なし」という名前の由来については、詳しいことはわかっていません。中の実が白いので「中白(なかしろ)」が縮んだのだとか、実のお尻の部分がご存知のようにリンゴと同様へこんでいるので、「端無し(つまなし)」からきているのだとか、芯に近い部分の果肉が酸っぱいので「中酸」=なかすと呼ばれていたものが変化した、などなどさまざまな説がありますが、どれも駄洒落のような思いつきじみている上、他の果実にもあてはまるものもあり、なぜそれがナシに特定されたのかを説明できておらず、こじつけの感が否めません。
唐代の中国ではナシのことを「梨子」と呼び、かたや近縁の同じバラ科のカリン(花梨 Pseudonia sinensis) やウケザキカイドウ(受咲海棠 Malus beniringo Makino)などの樹を指して「奈」と呼びました。そしてウケザキカイドウは日本では別名ベニリンゴ、またカラナシ(唐梨)といい、その実はリンゴとさくらんぼの中間のような形をしています。日本では、カラナシやカリンと形が似た実をつける、なじみが深いナシに「奈」をあてはめ、その実(子)であるナシの実を「奈子」(なし)と呼んだ、とするのがもっとも自然ではないでしょうか。
梨は水分が豊富なのは言うまでもなく、利尿・代謝を助けるカリウム、消化を助けるアルギン酸が豊富に含まれ、まさに暑さ対策にぴったり、夏から初秋に必須の果物。幸水からはじまって豊水、二十世紀、そして新高へと、品種を移しつつ続いていきます。それぞれに特有の美味しさがはっきりわかるのも梨の特徴。今年の夏は暑いようです。梨の早生種が出回るのが待ち遠しいですね。
梨(ナシ)の主な産地と生産量や食べ頃の旬梨の種類と食べ頃