わたぐもに 顔をうずめて 甘き旅。ちょっとなつかしい「食べるコットン」の世界へ
ライフ
顔より大きいお菓子って、いったい
綿菓子(わたあめ)はお好きですか? お祭りや学園祭をはじめホテルのビュッフェにも登場、いつも人が並んでいて、食べると大人も子どもも思わず笑顔になってしまう不思議なお菓子。真っ白な綿雲をもふもふかじるのは、とっても楽しいですね。七十二候『綿柎開(わたのはなしべひらく)』の季節です。食べるコットンのなつかしい世界へご案内しましょう。
綿菓子は、楽しい場所で売っています。職人さんでも自販機でも
わたぐも製造機
「綿菓子の自動販売機」をご存じでしょうか。若者は信じてくれませんが、ちょっと前まではスーパーやゲームセンターの一角などに置かれていたものです。
100円玉を入れると、袋詰めの綿菓子ではなく、コインシャワーのように一定時間(量?)もくもくと綿が流れ出し、備品の割り箸に自分でクルクル巻き取って綿菓子が作れるのです。または、窓の中につつ〜と棒が下りてきて、目の前で綿をクルクルして作ってくれるお世話好きタイプも(時間はかかりますが)・・・最近では、大人が機械を探しあてて仲間と大きさや形を競ったりしてなつかしんでいるようです。ふわふわの綿菓子をかじるのは、いつも楽しい場所ですね。
世界で最初の電動綿菓子製造機が作られたのは、1897年のアメリカ・テネシー州。日本は明治時代でした。1904年、『 Fairy Floss(妖精のわた)』という名前でセントルイス世界博覧会に出展したところ大評判となり、一箱25セントで68,655箱も売れたそうです。
日本では、大正時代以降すっかり縁日の定番に。現在も世界各地で、街をふわふわ盛り上げています。
綿菓子機は、加熱する回転釜とそれを囲む受け皿でできています。たくさんの穴が開いた回転釜を加熱しながら高速回転させることで、溶けた砂糖が遠心力で吹き飛ばされ、すぐに冷えて糸状に固まります。それを割り箸でからめとっていくのですね。回転が速いほど急激に冷えて、きれいな綿になるそうです(この状態を『アモルファス』といいます)。小さな穴をいくつか空けた缶をハンドミキサーなどにつないでコンロで温め、自家製造してしまう人もいると聞きます。
砂糖は、詰まったり焦げたりしにくいザラメを使用することが多く、ザラメに色や香りを着けることも。砂糖の固まりといっても空気で膨らんでいるため、1本は70kcal前後と、意外にも屋台メニューの中では低カロリーのようです。
自分でクルクル作りたい・・・大きくて丸い綿菓子にするには?
ごちそうがいっぱいのビュッフェでも綿菓子機の前に人が並ぶのは、作る楽しさゆえでしょう。棒をクルクルさせながら雲を大きくするのは、食べる以上にワクワクしますね。まず芯となる綿を巻いたら、流れを棒で追いかけずに一カ所で巻き取るようにすると きれいな形になります。綿がすべって巻き取りにくいときは、割り箸をほんのちょっと湿らすとよいそうです。 棒を下に向けすぎないようにしましょう。
子どもの頃、アニメキャラクターなどが描かれた持ち帰り袋も楽しみのひとつでした。パンパンに膨れているのは、綿菓子がくっつかないように袋に空気を入れているそうです。
近年は、割り箸の事故防止に紙製の棒やプレッツェルなどで代用したり、割り箸で作ってから袋にいれる際に抜くことが多いそうです。
これからお祭りやバザーなどの行事で綿菓子機を使う方もいらっしゃるでしょうか。できあがりのサイズやその日の気候にもよりますが、綿菓子を1本作るのには約1〜2分かかります。前もって当日の人数や所要時間を計画しておくと安心ですね。
綿菓子は暑さや湿気にしぼみやすく、振動を与えると固まってしまいます。溶けるとベタベタするので、手で長く触れないようにして早めに食べましょう。もし残ったときは、ジッパー袋などに入れて冷凍庫にしまうと長持ちします。しぼんでしまったものは砂糖として飲み物や料理に使うことが可能です。
ドリンクに肉鍋に、のせる綿菓子。 咲いて光って変幻自在!
ここにもカラフルな綿菓子が
日本でも色やフレーバーつきの綿菓子が増えてきましたが、海外ではカラフルなものが主流のようです。インターネットでは、世界で話題の綿菓子が動画などで紹介されています。
中国では パステルカラーの綿菓子で大輪の花をつくる『花式綿花糖』が大ブーム。職人さんの神業に見とれてしまいます(ザラメの色も強烈です)。海外のテーマパークでは、七色に光る幻想的な綿菓子が! なんと棒がLEDライトになっているそうです。日本でも 綿菓子がキラキラ光る「フラッシュライト・スティック」などが販売され、食べ終わったらペンライトとして使用できるとのこと。さらに、音楽に合わせて踊りながら綿菓子を作るアーティストも。ライトアップされてシューと宙を舞う綿菓子は、精悍な「一反木綿(妖怪です)」のよう・・・まわりの子どもたち、大興奮しています。
いま この綿菓子を いろんな食べ物にのせるのが流行しています。
ケーキやパフェなどスイーツはもちろん、カクテルなどのドリンクをおしゃれに演出したり、料理のトッピングにするのです。ステーキや肉鍋にぶわっとのせられた綿菓子を初めて見たらびっくりしますが、白い綿菓子は砂糖そのもの。味は「わりした」の砂糖がわり、調味料としてはノーマルなのですね。綿はすぐに溶けてしまいますが、それがまた「儚い夢のようで、ぐっとくる」と喜ばれています。
飴玉を入れて作れる「家庭用綿菓子機」もあります。ミルク飴ならミルク味、コーラ飴ならコーラ味、ノンシュガーのど飴ならノンシュガーのど飴味の、しかもその色のオリジナル綿菓子を製造実験?できますよ。スーパーやコンビニでは、小袋入りの綿菓子も売られています。ちぎっていろいろな食べ物にのせて『綿柎開』食卓にするのも楽しそうですね。
西日本では『わたがし』・東日本では『わたあめ』と呼ぶ人が多いのだそうです。
お口の中で一瞬ぽっと温かく、すぐに甘く溶けていく綿の雲・・・知らないうちに微笑んでしまうのは、心がふわふわ空を飛んでいるからかもしれません。