
皆さんは家に「防災リュック」を準備しているだろうか。海上保安官の経験を生かして暮らしに役立つ情報を発信する川崎みささんは、2018年の西日本豪雨の際、まったく備えをせずに自宅で被災。「子供達の被災期間をより過酷にしてしまった」という反省から、災害への備えを学び、「ひろしま防災Jプログラムトレーナー」の資格を取得。そんな、2児のママでもある川崎さんに、「わが家の防災リュック」の作り方を解説してもらった。
被災して防災リュックの必要性を痛感
「防災リュック」とは、災害時に役立ちそうなモノを入れたリュックのこと。あらかじめ必要なモノを揃えておくことで、非常時にパッと持ち出せる防災アイテムの一つです。
実は、2018年の西日本豪雨で被災するまで「災害時のために備える」ということを、私は考えたこともありませんでした。
当時わが家は夫婦共に海上保安官だったので、「災害が起こったら出動する」というイメージが強く、恥ずかしながら子供が生まれた後も「家に何かを備える」という発想がなかったのです。そんな意識のまま迎えた西日本豪雨災害。
その時私は育児休業中(産後1カ月)。わが家が暮らす宿舎自体は無事で、赤ちゃんがいることもあり自宅避難でしたが、次のような事態に見舞われました。
●7月の暑い時期に1カ月間断水になった。
●災害から数日後に給水車が各公民館に来るようになったが、早いもの勝ち状態で、公民館から少し離れたわが家は1度も水がもらえなかった。
●スーパーやコンビニから一斉に食品がなくなった。
●家の周辺1キロほどでスマホが使えなくなった。
●家の近くで土砂崩れが起こり、通行できなくなった。
このような状況下で、「備えておけば…」と後悔する日々。そんな大失敗から、災害への備えを意識するようになり、用意したモノのひとつが「防災リュック」です。
防災リュックには次のようなメリットがあります。
(1)あらかじめ災害時に必要なモノを入れておける
(2)非常時にパッと持ち出せる
(3)両手が空くので避難の際に便利
(4)荷物が多くても運びやすい
(5)重さを両肩で支えるので安定感がある
防災リュックを準備しよう
では、実際に防災リュックを準備していきましょう。
まずはリュックの選び方について。私は前職の海上保安官時代の行軍訓練などで身体への負担が少なく、長時間背負うことができるようにショルダーが太いリュックを使っていた経験から、今でもリュックはショルダーが太いモノを選んでいます。
防災リュックに入れるモノは、(1)災害時に役立つモノ、(2)家族に合わせて必要なモノ、(3)季節によって必要なモノ、の3つに分けて考えて備えています。
(1)災害時に役立つモノ
・水
・食料
・ウエットシート
・手ぬぐい
・タオル
・懐中電灯
・歯ブラシ
・ゴミ袋
・緊急用トイレセット
・軍手
(2)家族に合わせて必要なモノ
・家族各人の下着
・コンタクト用品一式
・常用薬
・生理用品
(3)季節に合わせて必要なモノ
〈夏〉
・水(多めに準備)
・扇子やうちわ
・冷感タオル
・着替え
など
〈冬〉
・靴下
・使い切りカイロ
・防寒具(マフラーや手袋)
など
重さはどれくらいがベスト?
一般的に、防災リュックの重さの目安は女性が約10㎏、男性が約15㎏と言われています。人によってベストな「防災リュックの重さ」は変わりますが、わが家の場合、総重量は約3〜4kgを目安にしています。
なぜなら、迅速に避難するために大人が背負っても「安全に動ける」程度の重さで、万が一、小学校1年生の息子が使う時のことも考えて、ムリなく持ち運べる重さにしたいと思ったからです。
以前は、「防災リュックに必要なモノを入れる」ことばかり考えて、アレもコレもと入れすぎていましたが、安全に避難場所まで辿り着けなければ、どんなに立派な「防災リュック」を用意しても意味がないと気づき、重たくなりすぎないように入れるモノの「優先順位」を考えるようになりました。
入れるモノの優先順位を考える時は、海上保安官時代に先輩方から教わった「ないと命にかかわるモノ」を入れた後に、スペースや重さに余裕があれば「あったら便利だと思うモノ」を入れるという「限られたスペースで暮らす船内生活での心得」を応用。以前の私のように、優先順位を付けるのが苦手な方に、おすすめの方法ですよ!
点検のタイミングと回数を減らすコツ
私はズボラで家事の要領も悪いので、マメに「防災リュックの点検」をすることができません。ですので普段は、洋服を衣替えするタイミングで年に2回(初夏と初冬)、防災リュックの中身を季節に応じて少し入れ替える程度にしています(ついでに、子供の下着のサイズが変わっていないかもチェック)。
「災害への備え」は長く続けたいので、「ムリなくできるよう」を心がけています。
ちなみに、使用期限等がある場合はなるべく長い期間使えるモノを入れるのが、こまめに防災リュックの点検をせずに済むポイント!
〈例〉
・水(保存期間:約10年)
・緊急用トイレ(保存期間:約10年)
・食べ物(賞味期限:約8カ月)
私は2018年の西日本豪雨で何の備えもないまま被災して、子供達の被災期間をより過酷にするという大失敗をしました。普段スーパーやコンビニに行くと必ず手に入るモノが、災害時は手に入らなくなります。
また、規模や場所によっても異なりますが、災害時の公的支援は全ての被災者に平等に行きわたるわけではありません。災害時に私のように困らないように、自分のために家族のために、ぜひ「防災リュック」を準備してくださいね。
写真=筆者撮影