線状降水帯による災害事例はいくつかありますが、今回は、線状降水帯がより注目されるきっかけとなった「平成29年7月九州北部豪雨」と、台風に伴った線状降水帯で災害が発生した「令和4年台風第15号による大雨」の2つの線状降水帯発生事例を振り返ります。
■平成29年7月九州北部豪雨
2017年7月5日から6日にかけて、活発化した梅雨前線の影響で、九州北部を中心に局地的に非常に激しい雨が降りました。梅雨前線に向かう下層の暖湿気流と、上空の寒気の流れ込みによって、大気の状態が非常に不安定になり、積乱雲が発達して線状降水帯を形成し、継続して同じ場所に強い雨を降らせたことが原因でした。
2日間の総降水量が、福岡県朝倉市朝倉で586.0mm、大分県日田市日田で402.5mmを観測するなど、福岡県や大分県で記録的な大雨となりました。この大雨により、5日17時51分に福岡県、19時55分に大分県に大雨特別警報が発表されました。また、土砂災害や堤防の決壊などによる浸水害が発生し、死者37名、行方不明者4名の人的被害や家屋の倒壊など、多数の甚大な被害が発生しました。
同年の新語・流行語大賞に「線状降水帯」がノミネートされました。この頃から本格的に線状降水帯が注目され始めたと思われます。
■令和4年台風第15号による大雨
2022年9月23日に発生した台風15号「タラス」は、台風としてはあまり発達することはなく、暴風域を伴わなかったものの、23日夕方から24日明け方にかけて、静岡県など東海地方で猛烈な雨や非常に激しい雨が降り、線状降水帯が発生するなど記録的な大雨となりました。
24日午前6時までの24時間降水量の日最大値は、静岡市で416.5mm、静岡市鍵穴で405.0mm、藤枝市の高根山で403.0mm、森町三倉で360.5mmと、いずれも観測史上1位の値を更新しました。静岡市の9月の降水量の平年値は280.6mmですので、この雨で9月1ヶ月分にあたる降水量の約1.5倍の雨がたった1日で降ったことになります。
線状降水帯は、梅雨前線に伴って梅雨時期に発生・注目されることが多いですが、台風接近時も線状降水帯が発生することがよくわかる事例です。
線状降水帯は、条件さえそろえば、どの地域で発生してもおかしくない現象です。大切な命を守るためにも、日ごろから正しい知識を得ると共に、正しい備えをすることが大切です。
最終更新者:
石榑 亜紀子