物理学賞、化学賞、生理学・医学賞の3部門は、科学分野における世界最高の栄誉であると考えられており、毎年注目されていますね。今年の物理学賞は、55年ぶりに女性に贈られることになりさらに注目が集まっています。
ドナ・ストリックランド博士(1959年5月27日〜)は、カナダの光学研究者で、カナダ・ウォータールー大学の准教授。1903年のマリー・キュリー(1867年11月7日〜 1934年7月4日)、1963年のマリア・ゲッパート=マイヤー(1906年6月28日〜1972年2月20日)に続き、女性として3人目の授賞者となりました。
ストリックランド氏は、学生時代からの指導教員だった、アメリカ・ミシガン大学のジェラール・ムル博士とのレーザー物理学分野での功績が認められました。この技術は、がんのレーザー治療や視力矯正手術に使われています。同賞は、ベル研究所出身のアーサー・アシュキン博士を加えた3名が授賞。ストリックランド博士は、ノーベル物理学賞が50年以上もの長い間、女性に授けられていなかったことが「驚きだ」と語っているということです。
物理学賞をはじめて授賞した女性、マリー・キュリーは「キュリー夫人」として日本でもおなじみですね。放射線の研究により、36歳の若さで夫のピエールとともに女性初のノーベル物理学賞、さらに夫なき後の1911年にもラジウムの発見でノーベル化学賞を受賞しています。彼女は、パリ大学初の女性教授職にも就任しています。「女性初の」づくしのキュリー夫人ですが、この時は、まだ女性に大学への進学の機会すら開かれていなかった時代。苦学のすえ故郷ポーランドを離れ、当時女性でも科学教育を受けられる数少ない大学のひとつだったパリ大学に入学、研究者への道を歩みはじめるのです。こうして、ノーベル賞を2度授賞した初の女性になったキュリー夫人ですが、彼女の娘イレーヌ・ジョリオ=キュリーも1935年に夫とともノーベル化学賞を授賞しています。二度の授賞、夫婦で、親子で、ノーベル賞を授賞するとは!
今なお男性優位の空気が感じられるノーベル賞ですが、キュリー家をはじめとして、夫婦でノーベル賞を受賞した例が過去に5組もあることに驚かされます。膨大な量の研究、家事に育児。いったいどのように役割分担し、時間をやり繰りしていたのでしょうか。日本人のノーベル賞授賞のニュースでは、妻の内助の功が取り上げられ、美談として語られることが多いようです。日本でもそろそろ、女性初のノーベル賞授賞、夫婦での授賞というニュースが聞けるとうれしいですね。
参考
BBCニュースウェブサイト