旅は歩くことから始まりました! 旅の本といえば『東海道中膝栗毛』が思い出されます。この「膝栗毛」が「徒歩で」という意味になります。栗毛といえば馬のこと。ここでは栗毛の馬ではなく自分の膝を馬がわりに、というシャレが込められているのです。
東海道から伊勢神宮へむかう弥次さん喜多さんの旅のてんやわんやを描いた物語ですが、当時流行したお伊勢詣りの旅のハンドブックといった趣もありました。ふたりのふざけた行動が笑いをさそうと同時に、名所や名物が詳しく語られているのが特徴です。また府中では安倍川餅、丸子(まりこ)のとろろ汁、桑名といえば焼きはまぐりといった具合に、今でも名を馳せるご当地グルメの紹介もあり、大いに人気を博しました。
今では新幹線を使えば、あっという間に名古屋を経由して伊勢まで行けますが、こんな現代だからこそ時間をかけて歩いて旅したい、という人も増えてきています。
そんな人のために全国に「自然歩道」が整備されているのをご存じでしょうか。例えば関東地方でしたら一都六県にまたがる関東ふれあいの道があります。全長約1,800km、自然とともに歴史や文化遺産にも触れながらの徒歩の旅がぎっしり詰まっています。
昔の旅は身一つ、いわば命を賭けたものでもありました。旅を人生として生きた俳人松尾芭蕉の『奥の細道』には俳人らしい観察眼が紀行文の中に光っています。旅の一歩は自分の身体を運ぶとともに命を運ぶという思いがあったようです。
私たちにとって道は生活のなかの移動手段ということが大半ですが、ひとたび自然の中にポンと自分の身を置いてみたとき、前に続く道は今とは違うものに見えてくるかもしれません。もしかしたら誰も通らなかった道を今からあなたが切り開いていく、そんな可能性もあるのです。
今日は「道の日」いつも通っているあなたの道に、新しい何かを見つけられたら素敵です。
参考:
環境省<自然大好きクラブ>