日本には、本州と四国にニホンツキノワグマ(頭胴長110~130センチ、体重50~80キロ)、北海道にエゾヒグマ(頭胴長200~230センチ、体重150~250キロ)が生息していますが、その数はニホンツキノワグマが2000年以降およそ15000頭程度、エゾヒグマは20世紀後半には2000頭ほどといわれてきましたが、近年の調査では6000~7000頭ほどになっているといわれています。
ツキノワグマについても、毎年の捕獲(駆除)数が2000頭前後あるため、推定値よりも実はもっと多いのではないか、との推測もなされています。
統計によれば1980年~2000年までは死傷者数5人~36人 だったのが、2001年以降は47人~147人と実際増加しています。今年2016年も、秋田で四人がクマに襲われて命を落していますし、東京にも程近い神奈川県の相模原市でラーメン店にクマが突入してきた、なんていうニュースもありました。
この原因には、戦後すぐの大規模植林で奥山が杉・ヒノキ林に置き換わったためクマの食物となる木の実が慢性的に減衰しているところへ里山の荒廃や開発で自然環境が悪化し、より食物が減って飢えたクマが里に下りてくるようになったとも、シカの頭数増加によりクマの数も増えているからとも言われていて、実態はよくわかっていません。
が、かつてはマタギや杣人など人間が、クマと人の生活圏の緩衝地域やクマの生活圏に入り込んでいたためにクマが人間を怖れていたのが、そのような職種の人の数が減ったため、が、人間を怖がらない世代が多くなってきたからではないか、ということは間違いないようです。人間の姿を見ても悠々と歩いているクマを多く見かけるようになっています。秋田鹿角市で射殺されたクマの胃の内容物を調べたらタケノコに混じって人の肉片や髪の毛が見つかり、人食いグマの増加を懸念する声もあります。
全国的に自然由来の生業・農林業や水産業から消費型の都市生活志向は近年ますます強くなり、人間社会の自然地域からの撤退傾向が顕著となりました。野生動物たちはこの人間界の後退に反応して、町へと進出してきているのではないでしょうか。人間側の生活、志向の変化こそ、クマを山から引き込んでいる、といえるのでは。農林業の分厚い活性化こそ、クマと人との間の緩衝となって、トラブルを減らす手段かもしれません。
世界的に見ても、大都市圏のすぐ近くにクマが生息する自然環境があるのは日本列島の特徴であり、自然が未だ豊かであるという証拠であり、そこに暮らす人間にはクマとの共存の道を講じるのは宿命づけられているともいえます。古くからの暦にすら登場する親しみ深い野生動物。人身被害も、クマたちのむやみな駆除も、ともに減らしていく方法を考えていきたいですね。
<参考>
世界文化社「生物大図鑑動物」
アルフレッド・ローマー「脊椎動物の歴史」
近年の熊被害の推移:
http://www.forest-akita.jp/data/sansai/kuma-taisaku/kuma.html危険生物MANIAX
http://tsukinowaguma.etc64.com/