カストルとポルックスに該当するカストールとポリュデウケースの父はオリンポスの最高神ゼウスで、「ゼウスの息子」の意をもつディオスクーロイ(Διόσκουροι)と呼ばれています。スパルタ王の王妃であったレーダーを見初めたゼウス。不倫の際の常套手段である動物への化身をし、白鳥の姿でレーダーのもとに通い、やがてレーダーは二つの卵を産み落とします。カストールとポリュデウケースは一つの卵から生まれ出て、もう一つの卵からはヘレネーとクリュタイムネストラーという姉妹の双子が生まれます。世界中の神話に見られる卵生神話の一つですが、これほど双子のモチーフが繰り返し登場するのはめずらしいかもしれません。
兄カストールは人間である母親の血を受け継ぎ、死ぬ宿命の人間として、弟ポリュデウケースは、神である父ゼウスの血を受け継いで不死でした。
二人は武芸の技に秀でた若者に成長しますが、品行方正とは到底言いがたい、やんちゃが過ぎる若者たちで、やはり双子の不良仲間と四人でつるみ、婚約者のある娘たちを略奪誘拐したり、牧場の牛を強盗した挙句、分け前で争いになるなど、ハチャメチャな行動を繰り返します。一方で他国に略奪された姉妹のヘレネーや宝物である金の羊の毛皮をスパルタに奪い返すなど、いわば族長時代の英雄像とも言っていいでしょう。
しかし、牛の分け前で争いになった双子と再び争いとなり、その決闘で、二人は勝利しますが、兄カストールはその際に流れ矢に当たって命を落としてしまいました。ポリュデウケースの喪失の嘆きはすさまじく、家の中の兄の遺物、景色の中に思い出される兄の姿、ひとつひとつに涙を流して悲嘆にくれ続けます。そして遂に父神ゼウスに、不死の体を返上するから、自分も兄と同じ場所に送ってくれと嘆願しました。ゼウスはその願いを聞きいれ、兄弟を空の星座にし、冬の夜空では空に、夏には冥界に、永遠に離れ離れにならないようにした、ということです。
兄弟とは言いつつも、この二人には著しい寿命の差があり、実際には別の生き物。現代に当てはめますと、人とペットの死別の物語にも見えてきます。
あきれるようなヤンキー系ブラザーの蛮行の連続と思いきや、最後にほろりとさせられるなど、はじめから終わりまで予想を裏切り続ける奇妙な神話ですが、筆者は個人的には好きな物語です。ふたご座生まれの人は二面性や意外性をもつと言われますが、それにふさわしいようにも思えますがいかがでしょうか。
その奇妙な星カストールを放射点にしたふたご座流星群も、14日のピークを境に、20日ごろに見納めとなります。
しかし、流星群の衰えと入れ替わるようにレナード彗星(Leonard C/2021 A1)が17日ごろから年末にかけて、最大光度となると見られています。2021年の1月3日に発見されたほやほやの彗星で、2022年の1月3日に太陽に最接近します。
年末までの夕方、西南の低い位置にこの彗星を見られるかもしれません。宇宙からのクリスマスプレゼントかもしれませんね。
参考・参照
星空への旅 エリザベート・ムルデル みくに出版
星空図鑑 藤井旭 ポプラ社
見られるのはいまだけ レナード彗星 観測のチャンスは年末までの夕方 | 社会 | 新潟県内のニュース | 新潟日報モア