崖の下にも3年、ついにソメイヨシノも花を咲かせました
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植樹から3度目の春、初めて花を咲かせた復興記念樹のソメイヨシノ
2012年に行われた「春を報(しら)せる百円桜プロジェクト」にて、皆様からお預かりした募金は、すべて桜の植樹に役立てさせていただきました。
第1回目の植樹は、2012年5月4日、宮城県東松島市矢本上沢目で行い、地域の皆さまにご協力をいただき、シダレザクラ15本とソメイヨシノ15本を植樹しました。
その桜が、昨年は見事シダレザクラが花を咲かせ、さらに3年目となる今年は、ついに…ソメイヨシノも花を咲かせたというご連絡をいただきました。そこで、早速私たちは現地に向かうことにしました。
崖の下にも3年。ついにソメイヨシノが花開く
見事に咲いたソメイヨシノの花
この桜が植えられている場所は、矢本横穴古墳群そばの崖山の下。春には梅の木が咲き誇る、とても美しい場所です。目の前には畑が広がり、この畑を見下ろすように、桜の木は横一列に並んでいます。
地域の皆様が大切に手入れしてくださっているおかげで、まもなく3年目となる今年も、30本の桜たちはすくすくと元気に育ち、そのうち半分ほどの木が花または蕾をつけていました。
桜のそばで咲き誇る満開の梅の木
ソメイヨシノの木全景
その中で一際目を引いたのが、今年初めて花を咲かせたソメイヨシノの花。1年前、シダレザクラは花を咲かせましたが、ソメイヨシノは花がつきませんでした。1年たった今、その木が可憐な花をつけていたのです。それも、1、2輪ではありません。まさに「石の上にも3年」ならぬ「崖の下にも3年」。まだ小さな木であるため、枝全体に花がつくわけではありませんが、空に向かって伸びる枝々には、白い花がいくつも咲いていました。元気いっぱい咲く桜の花に、思わず私たちも笑顔になりました。
シダレザクラは今年も順調に開花
美しく咲いたシダレザクラの花
昨年に引き続き、シダレザクラも元気に花を咲かせていました。鮮やかなピンク色の花です。花や蕾は、昨年よりも確実にその数を増やしていました。まだ蕾のものも多くみられたので、これからもっと華やかな様子を見せてくれるでしょう。
たくさん花をつけたシダレザクラの花々
シダレザクラの木の全景
そして驚いたのは、その生長ぶり。昨年は1mちょっとの大きさの木がほとんどでしたが、今年大きいものは2m近くありそうな高さです。来年は、いったいどれだけ大きくなっていることでしょう。すでにそんな期待で、胸がいっぱいになるのでした。
地域の皆さんに支えられて―2年目の苦労。そして、桜への想い。―
左から順に、石垣さん、櫻井さん、日本気象協会東北支局の金丸氏
東松島市の復興記念樹は、地域の皆様にご協力いただき、定期的に様子を見ていただいています。地域の代表の石垣さん、櫻井さんのお二人に、普段のお手入れや桜に対する想いを聞いてみました。
―普段はどのようなお手入れをしてくださっているのですか?
「主に春と秋に、桜の木の周りを中心にしっかり草刈りをします。虫がついてしまっては大変ですから。それ以外の時も、定期的に草刈りをしています。それから、台風や雪、強風の時は、枝が折れないよう添え木にしっかり結び直すこともしています。」
とても大切に育ててくださっているのですね。
―桜を育てる中で、大変だったことはなんですか?
「やはり、2年目が一番大変でした。まだ若い木なので、何としても虫がつかないよう、とにかく気を配りました。こうして30本植えた木が、すべて無事に3年目を迎えることができ、ほっとしています。」
植樹した木がすべて元気に育っているのは、お二人をはじめ、地域の皆様のおかげですね。本当にありがとうございます!
―この桜についての“想い”を教えてください。
「この場所の桜はまだまだ小さな木たちですが、そばには梅などの花もあり、とても良いところです。すぐそばには桜の名所の滝山公園がありますから、いずれは合わせて地域の名所にできたら嬉しいですね。」
とても素敵ですね!この高台がピンク色に染まる日が本当に楽しみです。
このように、地域の皆さんに支えられ、少しずつ花を咲かせる木が増えています。桜の生長が希望のシンボルであり続けるよう、私たちもお手伝いを続けていきたいと思います。東北に春を告げる桜として、みなさんを笑顔にすることができるように―。
桜のそばで春を告げるつくし
一方で、震災から3年が過ぎた今も、東北の各地で、未だ元通りにはなっていない現状もあります。現に、東松島市を走るJR仙石線は、今も高城町~陸前小野間が運転見合わせとなっていて、復興にはまだまだ長い道のりが続きます。美しい季節の訪れを取り戻すことが、復興の一歩になると、私たちは信じています。
元気に咲くタンポポ
3年目を迎えた桜の木たち。まだまだ若い木であるため、全体的に花数は少ないですが、その分、目の高さで桜の花を愛でることができるのは、今ながらの楽しみ方です。また、取材に行った4月21日は、周りでは梅の木をはじめ、足元にはタンポポ、オオイヌノフグリ、つくしなどが穏やかに春を告げていました。東松島はこれからが春本番。ぜひ、優しい春を感じに、この場所を訪ねてみてください。