集団就職についてはいくつもの論文が発表されていますが、そこで共通して語られているのは「明確な定義がない」ということです。高度経済成長とセットで語られることはあっても、どのような就職形態を「集団就職」とするのかは定まっていません。
ただ、高度経済成長期に地方から東京・名古屋・大阪といった都市部に、若い労働力が流入するための仕組みがあり、地域によっては中卒者や高卒者の半数以上が県外就職をしていました。都市部に移動するための列車が集団就職列車と呼ばれ、春先のこの時期に地方の駅では多くの若者が親との別れを惜しんでいました。
金の卵として高度経済成長を支えた地方出身の集団就職者ですが、その多くが都市の中小企業に就職します。大手企業に就職できる人もいましたが、大手企業には都市部で育った若者が就職するのが一般的で、結果的に人手不足になった中小企業が雇うことになるわけです。
高度経済成長を支えたのは中小企業ですので、そこで働く地方出身の若者たちが支えていたと言っても過言ではありません。厳しい労働環境下でも黙々と働き、親に少しでも楽してもらうために、自分の小遣いはほどほどにして仕送りをする若者も少なくありませんでした。
それでも苦しい中にも希望があり、いずれは都会で独立したり、安定した給料を稼いだりできる未来を夢見て働いていたわけです。行き詰まっている現代の私たちが、そんな集団就職者から学ぶべきことが、きっとたくさんあるはずです。
【参考】
集団就職者の高度経済成長