【復興記念桜レポート】まもなく7年目 満開の報せとこれからの課題とは
トピックス
満開を迎えた宮城県東松島市の復興記念桜(2018年4月16日撮影)
宮城県東松島市の「復興記念桜」は、植樹からもうすぐ丸6年が経過しようとしています。今年も満開を迎えた現地からのレポートをお伝えします。
もうすぐ7年目を迎える東松島の復興記念桜
こんにちは!毎年この時期にお伝えしている宮城県東松島市の「復興記念桜」レポート。
仙台生まれ仙台育ちの佐藤がお伝えします。
日本気象協会は約6年前、東松島市矢本上沢目の市道沿いに、鹿妻二区の皆様と一緒に桜を植えました。
東日本大震災の被災地に桜を咲かせようと、日本気象協会は2012年に「春を報(しら)せる100円玉プロジェクト」の中で皆様から募金を募りました。
このプロジェクトの第1回目の植樹となったのが、東松島市の鹿妻地区の「復興記念桜」です。
震災から一年を過ぎた2012年5月に、ソメイヨシノとシダレザクラを15本ずつ植えました。
「復興記念桜」があるのは、古墳時代から奈良・平安時代まで使用されていた「矢本横穴墓群」という古墳群で有名な場所で、7年前の津波は、この目の前まで迫りました。
この場所には、桜の生長とともに歴史ある古墳群とあわせて桜の名所となり、震災からの復興を象徴する憩いの場所になるよう、沢山の方々の願いが込められています。
今年も届いた満開の便り ~「復興記念桜」を訪ねて~
この時期になると満開の便りが待ち遠しくなります。2018年の今年も便りが届き、早速4月16日に「復興記念桜」を訪ねてきました。
仙台市では平年よりも12日も早い4月4日に満開を迎え、とっくに青葉になっていましたが、東松島の桜は少しのんびりやさん。
この日は周辺の桜の木も満開で、この地域一帯が花真っ盛りでした。
【ソメイヨシノ】5度目の開花 年々華やかに
満開のソメイヨシノ(2018年4月16日撮影)
ちょうど満開だったソメイヨシノは、遠くから眺めるとまだまだ可愛らしい印象ですが、昨年と比べてもだいぶ大きく立派に育ってきました。
近くで見てみると幹はだいぶ太くしっかりしてきた印象です。
花にもボリュームがあり、見事に咲き誇っていました。
【シダレザクラ】3メートルを超える高さに生長
七部咲きのシダレザクラ(2018年4月16日撮影)
高さは3メートルを超えているでしょうか。添えている支柱を追い越しそうな勢いです。
枝は、数も多く垂れ下がり、ソメイヨシノとは違った魅力があります。
まだひょろりとしていてシダレザクラの「趣のある姿」とはまだまだ言えませんが、今後の生長がとても楽しみです。
これからの課題~会長・齋藤さんとの会話の中で~
東松島市鹿妻自治会のみなさんと(右から二番目が自治会長の齋藤さん)
桜の生長を日々観察し、手入れをしてくださっているのは、自治会長の齋藤さんをはじめ、鹿妻地区の皆様です。
今回、皆様とお話をさせていただいた中で、目標としている「まずは10年」、強く大きく咲き誇る桜に育てるための課題も見えてきました。
【課題① 草刈問題】
桜は、市道の路肩の部分の急傾斜に植えられています。作業は主に草刈機を用いて行いますが、足元に気を配り、自身の安全を確保しながらの作業となるため、容易ではありません。
齋藤さん曰く、これからの季節は、月1回以上のペースで草刈が必要になるそうです。
地区の方10名ほどで、朝早い時間帯に1時間程度、草刈を行ってくださるそうですが、これがなかなかの大仕事です。
桜は急傾斜に植えられているため、草刈は大仕事
【課題② 病気問題】
昨年も問題になっていた花の咲かない木。
加えて今年は、きれいに咲いたソメイヨシノの一部の枝で、花芽がつかず葉っぱが茂っている状態がいくつか確認されました。
残念ながら、いずれも「てんぐ巣病」という病気にかかっている可能性があるとのこと。
「てんぐ巣病」は、カビの一種が原因の伝染病で、このまま放っておけば、いずれは衰弱して枯れてしまう病気です。
他の枝や木への伝染を防ぐため、早いうちに花の咲いていない枝は切り落とし、落とした枝は焼却する必要があります。
齋藤さんたちと話し合った結果、花が咲いている時でなければ病気の枝の区別がつかないため、まずは病気の枝に印をつけてもらい、時期をみて枝を切り落とすことにしました。
また、シダレザクラにも異変があり、枝の付け根に樹脂が染み出ているところが見つかりました。
同じ木の中で他の枝は花が咲いているものの、樹脂が染み出ている枝の先は、つぼみのままで咲きそうにありません。
こちらも病気の可能性があります。
折れてしまった木が1本、花の咲かない木が1本、そして枝に異変のある木が数本。
これから迎える7年目は、自分たちなりに情報を探りながら、桜を守る対策を考える一年になりそうです。
てんぐ巣病と思われるソメイヨシノの枝(葉が生えている部分)
【課題③ 剪定問題】
桜は切り口から菌が入りやすいため、正しく剪定してあげないと大きなダメージを受けてしまいます。
一方で、美しく咲かせるためには、最低限の剪定も必要になってきます。
現在、シダレザクラは、主の幹の下のほうから伸びる枝も上のほうから伸びる枝も、自由に伸び、多くの枝が重なり合い垂れていました。
シダレザクラの一番の魅力は、花の付いた枝が美しく垂れ下がる姿です。その姿に育てるためには剪定作業が必要です。
とはいえ、何しろ初めての剪定になるため、先述した病気の枝の切除もあわせて、やり方や時期について慎重に考えなければなりません。
まもなく7年目 いよいよ転換期!?
3年でこんなに大きく生長しました(左:2015年4月15日撮影/右:2018年4月16日撮影)
まもなく「復興記念桜」は植樹から7年目を迎えます。たくさんの方々に見守られて育った6年間でした。
3年目を迎える頃に初めての花を咲かせ、その後も風雨に負けず、すくすくと大きくなっていく姿には自分が励まされているような気持ちになりました。
ただ、今回の訪問を通して、大きくなることを手放しで喜んでいられる時期は終盤を迎えていることもわかりました。
この先は、いかに強く大きく咲き誇る桜に育てるか、専門的な知識も必要になる難しい時期にさしかかっています。
「まずは10年」強く大きく咲き誇る桜に育てるために
今年も美しく咲いたソメイヨシノ(2018年4月16日撮影)
「復興記念桜」を「まずは10年」強く大きく咲き誇る桜に育てるために、日本気象協会は、鹿妻地区の皆様と一緒に、今回の訪問で見えた課題に取り組み、大切に見守り続けて行きたいと思っています。
そして、桜並木が立派に育った遠くない将来、震災を知らない子供たちと一緒に「復興記念桜」訪れることが、震災の記憶も含め、鹿妻地区の古墳時代から続く壮大な歴史を伝えられるきっかけになればと願っています。
引き続き、皆様からの応援を宜しくお願い致します。
東松島市 復興記念桜のスポット情報
東松島市復興記念桜の地図
桜は、一般の方も見学可能です。
住所:宮城県東松島市矢本上沢目
アクセス:(電車)JR仙石線 鹿妻駅から徒歩約15分/(車)三陸自動車道 鳴瀬奥松島ICから約10分
※車でお越しの際は、願成寺様を設定されると近くまでお越しいただけます。 鳴瀬奥松島ICからお越しの場合、願成寺様の少し手前にチェーン着脱場があり、そこから畑をはさんだ場所が復興記念桜が植えられた市道です。