<気象予報士が振り返る「平成の災害」⑤>気象災害(平成元年-平成10年)PR
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日本気象協会に所属する勤続30年以上の気象予報士20人が「気象に関する平成の災害」を振り返り、被害の大きさや、社会的影響の大きさ、防災意識の変化や気象・防災情報の改善のきっかけをもたらした、などの観点から、17の気象災害をまとめました。
このうち平成元年~平成10年に発生した2つの気象災害について解説します。
【平成3年9月】平成3年台風19号
台風によって大量のりんごの落果したようす(写真提供:弘果弘前中央青果株式会社)
平成3年台風19号の影響により、全国で暴風による多数の死者、家屋の倒壊等が発生しました。
暴風により送電施設に被害が発生して広範囲で停電があったほか、塩風害により長期にわたる停電被害も発生しました。
農林業にも大きな被害を与え、西日本を中心に、塩風による果樹等の枯死、全国で森林の倒木などもありました。
この台風は「りんご台風」とも呼ばれ、青森県などでは収穫前のりんごの落果が多数発生し、被害金額は741億7千万円となりました。
このことを教訓に、暴風による落果や倒木の確率を軽減することを目的として、全国の果樹園で防風網の整備が進められました。
【平成5年6月~10月】平成5年夏の低温、多雨と日照不足
平成5年夏の気温・降水量・日照時間分布図(出典:気象庁ホームページ)
平成5年は、6月から10月にかけてほぼ全国的に低温傾向が続きました。
特に9月にかけては長雨と日照不足が重なり、農作物への影響が大きくなりました。
中でも水稲は、生育の遅れやいもち病の発生などにより、当時1000万トンの米の需要に対して収穫量が800万トンを下回りました。収穫高の程度を示す作況指数は74と、戦後最低の値を記録し、「著しい不良」となりました。
その年の米の在庫も23万トンしかなく、米の安定供給の確保という観点から、主食用及び加工用米について緊急輸入が行われました。
その後農林水産省では、米不足に備えた備蓄制度を設けました。
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