知っているようで知らない、“宣伝”と“広告”の違い
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日ごろ何気なく使っている、“宣伝”と“広告”という言葉。どんな違いがあるのでしょうか?
毎年3月に入るとポスター、電車内ビジョン、ネットのバナー広告、街中に立つのぼり、テレビCMなど様々な媒体で、「新生活」「フレッシュマン」応援キャンペーンと銘打った広告が目に留まるようになり、街中が華やいでいるように感じます。 ── というわけで今回のテーマは、この宣伝と広告について。どちらも何かを「多くの人に知ってもらう」という意味で使われていますが、どのような違いがあるのでしょうか?
“宣伝”と“広告”の違いその1、宣伝のはじまりは宗教から
宣伝(プロパガンダ)のはじまりはカトリック教会から?
宣伝には多くの人に働きかけて、思考や行動を一定の方向に操るといった意味合いがあります。古くから行為としての宣伝は世界中で行われてきましたが、宣伝という日本語については、プロパガンダ(propaganda)という言葉の翻訳といわれています。 プロパガンダは、「種まき」「繁殖」といった意味のラテン語が起源。世界で一番はじめにこの言葉を用いたのは、カトリックの教会という説が一般的とされています。1622年、宗教改革の動きが広がる中、主に海外での布教活動を統括するために設立された「布教聖省」(Congregatio de Propaganda Fide)の名称に用いられました。 その後、時代とともに宗教だけでなく政治の分野でも、プロパガンダという言葉が使われるようになります。
“宣伝”と“広告”の違いその2、宣伝を漢字の意味から読み解くと?
漢字の意味を解くと、宣伝は「上から目線」?
「宣」は、「のべる」「のたまう」とも読みます。考えや思惑などを示し、意向をゆきわたらすという意味があります。また神様や天子(君主)が人々にその意向を下すという意味もあります。 これら漢字の意味から考えると、「宣伝」には、意向を伝え(広く)ゆきわたらすという意味があります。どちらかというと「上から目線」という印象もぬぐえませんね。 しかし、昭和初期には日本の企業の中に宣伝部をつくるところが現れるようになると、宣伝という言葉には、商業的な意味合いが含まれるようになりました。
“宣伝”と“広告”の違いその3、広告は宣伝の一部
ご飯は炭水化物の中のひとつ。広告も宣伝の中のひとつ
企業が自社の商品やサービスを一般の人々に伝えて、「買う」「使う」といった行動を促す意味が加わると、宣伝は「宗教」「政治」「商業」と主に3つの分野で使われるようになります。 中でも、商品やサービスの宣伝など商業にかかわるものを特に広告(advertising)と、ほかと区別しています。「宣伝という大きなくくりの中に広告がある」、そう考えると理解しやすいかもしれません。
“宣伝”と“広告”の違いその4、広告が生まれたのはいつ?
江戸時代の広告チラシには、浮世絵の技術が!?
広告という言葉も、もとは訳語として生まれたといわれ、明治中期に使われるようになりました。 でも、それ以前に広告というものがなかったというわけではありません。引き札と呼ばれる広告チラシなどは盛んに作成されていました。浮世絵など版画の技術が発達するにつれ、色鮮やかな引き札も登場。今では美術的な価値もあるそうです。
“宣伝”と“広告”の違いその5、江戸時代の広告
読者にさりげなく商品名を刷り込み?江戸時代の広告がすごい
江戸時代の引き札では、「美艶仙女香」という白粉がよく知られています。名女形といわれた歌舞伎役者、瀬川菊之丞の俳名「仙女」から名付けたもので、浮世絵に描かれていました。 また『浮世床』『浮世風呂』などの代表作で知られる式亭三馬は、小間物屋として「江戸の水」という化粧水をはじめ、さまざまな品を売っていました。この時、自分の本に商品名や効能を書いたページを入れたり。また物語の中でも、商品名を登場させるなどしていました。 ちなみに、「仙女香」は一定数をまとめて買うと、人気役者のサインがもらえるなどのキャンペーンもあったそう。江戸時代の広告は今とほとんど変わらないですね。