ではなぜ「野菜と果物の違いは?」とか「本当はメロンは野菜なんだよ」などの野菜-果物別物的言説が巷間にのぼりがちかというと、それは果物(フルーツ)が主に子供たちに好まれる甘いデザートで嗜好品的であるのに比べて、野菜は食事のおかずとして供され、子供や偏食の大人に嫌われがちな食材である、という対比的な扱いをされる面白みからでしょう。
しかし、考えてみればあの「酢豚のパイナップル」をはじめ、リンゴ、ナシ、パパイヤ、メロン、かんきつ類などがおかず料理の素材に使われるのは普通のことですし、スナック菓子やジュースなどに野菜類はよく使用されていますよね。
江戸時代、夏になりますと、隅田川端などの納涼地に繰り出す町民を目当てに、道端で「水菓子売り」の露店が名物でした。桶や籠などに「水菓子」を並べて供しました。水菓子とは果物のこと。上代から中世は果物のことを「菓子」といいましたが、時代が下り近世になると、定時の三度の食事以外の間食を「菓子」と呼ぶようになり、そこで果物のことを「水菓子」とあえていうようになりました。水菓子売りが売るメインの果物はスイカとマクワウリ。スイカもマクワウリも、すっぱりと切って中身を見せて客を呼び込んだことから「西瓜の断ち売り」とも呼ばれていたとか。
スイカもマクワウリも老若男女問わず好まれていて、スイカが夏の定番なのは、その当時からの伝統を引き継いだもの。また、マクワウリも、今でこそめったにお目にかかりませんが、少し姿を変えて現代にも引き継がれていました。近年の主流のマスクメロンではなく、少し小ぶりのつるっとした皮肌のプリンスメロン。昭和の時代、高価なフルーツだったメロンを、庶民に手の届く値段で流通させる先駆となった日本で作出されたノーネットメロンですが、これは洋品種のメロン・シャランテと、日本在来のマクワウリをかけあわせて作出されたもので、いわばマクワウリの子孫。
夏の水菓子の代表選手でもあったスイカやメロンなどの甘い瓜類を、「ホントは野菜」と言うことが正しいのかどうか。やはり、スイカもメロンもマクワウリも、正真正銘果物、でいいんじゃないでしょうか。
農産物等の食品分類表 厚生労働省食品安全部 [2015.8版]野菜の定義について