さて、全国にある4つの捕鯨基地のうち、唯一捕獲したクジラの解体を一般人が自由に見られる場所があります。
千葉県南房総市の和田浦です。鹿島鳴秋の名曲「浜千鳥」が生まれた静かな港町は、和田浦駅にクジラの骨格標本のレプリカがある「クジラの町」です。
江戸時代の初期から大規模な捕鯨集団「醍醐組」が存在し、捕鯨が行われてきた房総半島には、各地に捕鯨の漁港がありましたが、1948年、和田浦に外房捕鯨が設置されてから、和田浦が捕鯨の中心拠点となりました。和田浦では毎年6月から8月、26頭を上限にツチクジラの近海捕鯨が行われていて、クジラが捕獲されると明け方から解体が始まります。一般人も自由にその様子が見学ができ、前日に解体の情報を受けた人々が集結して見守る中、巨大なクジラが約20人ほどの「解剖さん」と呼ばれる作業員たちにより見る見る切り分けられていきます。刃渡り50センチものなぎなたのような長刀とウインチで、約4~5時間をかけて、肉、内臓、皮、骨などに分けられます。肉は、業者だけではなく、見学に来た一般人にも、1kgから小売をしています。この夏、是非見学してみてはいかがでしょう、といいたいところですが、今年2018年のツチクジラの水揚げは、7月いっぱいをもって終了してしまったそうです。和田浦の船団が北海への遠征を控えていて、8月初旬には出発しなければならない事情があるようです。
解体見学は来年までおあずけですが、そんな和田浦の夏は、クジラ料理をふるまってくれる飲食店、旅館が目白押しです。クジラカツやクジラのタレ、竜田揚げ、刺身などの定番はもちろん、はりはり鍋や握りずし、酢の物など現地ならではの新鮮さで味わうことが出来ます。
鯨肉には、鉄分(吸収されやすいかたちでのヘム鉄)や海洋生物ならではの不飽和脂肪酸やコラーゲンなどが豊富なのはもちろん、抗疲労効果成分バレニンが大量に含まれていることがわかっています。バレニンは、クジラが飲まず食わずで何ヶ月も遠泳をしたり、深海深くまでもぐる呼吸と心拍を、極限まで落として生体を保つなどの脅威の能力を維持する成分で、人間が摂取すれば疲れにくく、疲労が取れやすいなどの効果があるといわれています。これは、マグロや牛、豚や鶏にも含まれていない成分なのです。昔の日本人がタフだったのは、クジラを食べていたせいかもしれませんね。
参考
水産庁・捕鯨問題の真実:http://www.jfa.maff.go.jp/j/whale/pdf/140513japanese.pdf
外房捕鯨株式会社 プレスリリースくじら料理 四季の宿じんざG7マイナス2」 海のプラごみ対策、日米はG7文書に署名せず