tenki.jpトップ サイトマップ ヘルプ

tenki.jp

    【猫の防災】避難所生活が難しく、脱走したら再会できる確率は犬より低い…震災の教訓から飼い主が備えておきたいこと

    日本に住んでいれば、地震や水害などの災害を避けて通れない。猫の飼い主は災害に備えてどのような準備をしておくべきだろうか?多くの被災地でペットの支援活動を行ってきたNPO法人アナイス理事長の平井潤子さんのインタビューと、平井さんが監修した『決定版 猫と一緒に生き残る防災BOOK』(日東書院本社)から紹介する。

    猫が生存できる「シェルター」を作る

    「避難所などに避難することになった時、猫はキャリーバッグが必須アイテムになります。ただ、逃げ出さないようにするためには避難先で安易にキャリーから出すことが難しく、狭いキャリーの中にはトイレを入れられない、といった問題もあり、犬に比べると避難生活は大変だと思います」と平井さん。その点を踏まえて災害への備えを考えることが大切だ。

    平井さんが強調するのは、人間にも共通した、基本的な防災対策をしっかり行うことだ。まずは、ハザードマップを見て自宅のリスクを確認したり、避難経路を確認したり、家具の転倒防止対策、ガラスの飛散防止対策、ケージの固定といった基本的な対策を。

    家の防災力を上げるとともに取り組みたいのが、猫が生存可能な空間作りだ。

    「例えば押入れの一角などに頑丈な家具を置いて固定し、その間にクレートタイプのキャリーなどを設置して、いざとなったら猫が逃げ込めるようにしておくことができれば、生き延びる可能性につながります。特に猫は、怖いことがあると狭い空間にもぐり込んでしまう習性があるので、最初からそのような空間を作りペット用シェルターとして活用すると、災害時に探す手間も省けます」

    なおシェルターにキャリーを利用する場合は、病院用とは別にしたほうがいいとのこと。「たいていは『病院に連れていかれる!?』とキャリーバッグに苦手意識を持ってしまい、キャリーを見ると逃げてしまいますので」。

    地震発生時に、シェルター部屋に猫が行き来できるドアが閉まらないようにしておくのも気づきにくいが大切なポイントだ。

    避難所以外の選択肢の目星を

    その上で、自宅にいられなくなることも考慮して、複数、猫を預けられる場所の目星をつけておくことを平井さんは勧める。

    前述の通り猫は避難所での生活が難しいうえ、災害時はその避難所が予定通りに猫を受け入れてくれるとは限らない。

    「東日本大震災の時は、ペット受け入れ可能の予定だった避難所で、近くに大きな病院の入院患者の皆さんが避難してきたため、動物の同伴ができなくなってしまったということがありました。いくら事前に自治体に確認しても、災害時には全てが予定どおりにいくわけではないのです」

    そこで、平時から親戚や友人などに緊急時に猫を預けることが可能か確認しておいてほしい。かかりつけの動物病院やペットホテルが一時預かりをしてくれる場合があるので、近隣の施設の情報も集めておこう。

    「ほかにも、設置が簡単なポップアップテントを用意する、車避難ができるようにしておくなどもいいでしょう。また、家の中で安全が確保できる場所があれば、猫だけを自宅に残し、飼い主は避難所から家に通って猫の世話をするという方法もあります。いざというときに備えて、たくさんの選択肢を考えておきましょう」

    猫のために備えておくもの

    猫用の非常用グッズを準備しておくことも忘れずに。

    「まずは猫の命や健康にかかわるモノを最優先に。緊急時はフードが手に入らなくなっても支援物資は人間優先。最低1カ月くらいはローリングストックしておくことをお勧めします。持病がある猫の場合、薬や療養食も忘れずに。あとは薬の記号番号や量が記載してある面の写真を撮ってスマホに保存しておけば、巡回診療をしてくださる獣医さんも対応しやすくなります」

    ローリングストックとは、フードなどを少し多めに買っておき、賞味期限の近いものから普段のご飯として使い、新しく買い足して常に一定量を備蓄する方法。

    帰宅困難になった場合に備えて、自動給餌器を導入するのもリスク管理になる。

    「ある方は、停電になった時のために、コンセントに蓄電池をつなぎ、蓄電池から自動給餌器の電源を取っています。水も、1カ所だけではなく、こぼれてしまった時のために何カ所か設置しておくといいでしょう」

    自宅を離れて生活する場合や、人に預ける場合に必要になるのがキャリーバッグだ。

    平井さんが監修した『決定版 猫と一緒に生き残る防災BOOK』によれば、衝撃に強いクレートタイプがお勧めとのこと。さらに、上からも開けられるタイプだと猫を入れやすい。持ち運びには、肩掛けベルトがあるとベターだ。合わせて、猫を入れて落ち着かせ、脱走防止にもなる洗濯ネットなども準備しておくことを推奨している。

    病院用のキャリーに加え、災害時に備えてシェルター兼用のキャリーを準備してもいいかもしれない。

    首輪だけでは再会できない!

    平井さんは、被災時にこそ大切になってくるのが、迷子対策だと言う。

    環境省がまとめた『東日本大震災における被災動物対応記録集』(2013年発行)によれば、東日本大震災時の猫の被害状況はほとんどわかっていない。猫は、犬のように自治体に飼育を登録する義務がないためだ。そのような中でも、被災した10自治体で首輪をした猫 39 頭が保護されたが、このうち一頭も飼い主は見つかっていない。これらの猫は、首輪のみで迷子札はなかったという。

    そこで『決定版 猫と一緒に生き残る防災BOOK』では、猫の迷子対策として、日ごろから首輪に慣らしておき、同時に迷子札や、マイクロチップを装着しておくことを勧めている。

    マイクロチップは装着とともに、環境省のウェブサイト「犬と猫のマイクロチップ情報登録」から飼い主情報の登録をすることも忘れてはならない。装着していても登録がされていなかったため、飼い主が判明しなかった事例もあった。また、譲渡で飼い主が変わっている場合は登録情報の変更も忘れずに。

    さらに、あらかじめ迷い猫チラシを作っておき、非常用持ち出し袋に猫の健康状態やワクチン履歴などをまとめた健康手帳などと一緒に入れておくと心強いだろう。

    被災地で野良猫が急増

    健康管理も忘れてはならない。

    「たくさんの犬猫が集まる避難所では感染症のリスクも高くなります。ご自分の猫を守るため、平時のうちにワクチン接種をしておきましょう。また、繁殖しないのであれば避妊・去勢もしておいたほうがいいでしょう」

    実は現在、2024年元日に発生した能登半島地震の被災地では猫が繁殖し、野良猫が急増しているという。

    「結果的に殺処分される猫を増やしてしまうことになってしまいますので、繁殖制限処置も大切だと思います」

    感染症予防のワクチン接種、マイクロチップ挿入などの迷子対策、そして、不妊手術など、どれも平時から飼い主が心がけてやっておくべきことではある。そうした飼い主としての自覚や責任感を常日頃から持っていれば、準備も自然とできるもの。それがいざという時に役に立つ。

    平井潤子(ひらい・じゅんこ)
    人と動物の防災を考える市民ネットワーク、NPO法人アナイス代表。緊急時に飼い主と動物が同行避難し、人と動物がともに調和して避難生活を送ることができるよう、知識と情報の提供を行っている。

    取材・文=青山 誠

    【猫の防災】避難所生活が難しく、脱走したら再会できる確率は犬より低い…震災の教訓から飼い主が備えておきたいこと

    天気ガイド

    雨雲

    最新の記事(気象予報士)

    今日の天気 28日21:00発表

    tenki.jp公式アプリ
    今日の最新天気が一目でわかる tenki.jp 山頂や登山ルートの天気がわかる tenki.jp登山天気