
今回で103回目、山形県内で最も古い歴史がある大江町の「灯ろう流し花火大会」が開催された。たび重なる水害によって堤防の整備が進む中、特別な思いでこの日を迎えた温泉宿の女将を取材した。
堤防整備で移転対象となり温泉宿の閉業決める
お盆真っただ中の8月15日、大江町左沢(あてらざわ)は最上川の川岸から約2000発が打ち上がる歴史ある灯ろう流し花火大会を目当てに多くの人でにぎわっていた。
左沢で約50年続くあてらざわ温泉・湯元旅館の女将柏倉京子さんは、「長年、最上川の川風に当たりながら見てきたのが今日で終わりだと思うと、しっかり目に焼きつけておきたい」と、この日を特別な思いで迎えていた。
旅館がある百目木地区は、2020年・2022年と立て続けに豪雨に見舞われた。
たび重なる水害を受けて、地区には堤防が整備される予定で、2026年度の着工に向け対象となる範囲に住む住民の移転が進められている。
柏倉さんの旅館もその対象で、柏倉さんは2025年12月いっぱいで旅館を閉める決断をした。
あてらざわ温泉湯元旅館・柏倉京子女将:
花火大会のお客を受け入れるのが今年で最後だと今朝も来た時から思った。
精一杯悔いのないように、最後までここを守っていかないといけない、今日も頑張ろうと。
とっておきの観覧場所がなくなること惜しむ声
花火の日は毎年遠方からも多くの予約が入る。
この日も埼玉や京都から宿泊客が続々とやってきた。
午後7時すぎ、打ち上げが始まると屋上で花火を楽しむお客の姿が。
この宿の屋上は、最上川の3カ所から上がる花火をすべて見渡せるとっておきの場所。
県外からのお客は「迫力がすごい」「3カ所全部見られるので花火を独占している感じ、幸福」と、口々に話していた。
また、「来年もここで見たい」と、閉業を残念がる声も聞かれた。
仕事が一段落した柏倉さんも。
あてらざわ温泉湯元旅館・柏倉京子女将:
最高の場所で今年は見られて幸せ。
しみじみ見たのは何年ぶりかという感じで、やっぱり花火はいいなと思った。
でも来年からは違う所で見ないといけないんだなと、いま空を見上げながら思った。
お客と一緒に見るのはこれが最後。
柏倉さんは、これまで支えてくれた人たちへの感謝の気持ちをかみしめながら夜空に輝く大輪の花火を見つめ、「旅館を閉めるその日まで、今まで通り来てくれるお客を大事に、感謝の気持ちを持って接客したい」と話していた。
(さくらんぼテレビ)