「ジムノペディ」だけではない!夏こそ聴きたいエリック・サティの魅力

サティの楽譜には不思議な指定が多く書き込まれている(高橋アキ校訂)
「音楽界の異端児」「音楽界の変わり者」と称され、西洋音楽に大きな影響を与えたサティの作品は、BGMのようにしても聞けるのですが、実はサティはいろいろな面を持った非常にユニークな作曲家でした。
この夏、関連の展覧会も開かれていますから、有名な「ジムノペディ」しか知らない人もあらためて聞いてみてはいかがでしょうか。
転換期の作曲家
当時のフランスは、世紀が入れ替わるときでもあり、エッフェル塔に象徴されるような、近代文明が社会に全面的に展開し始めた大きな転換期でした。
当時20代のサティは、パリのカフェ「黒猫」にいりびたり、ピアニストのアルバイトなどをしています。「ジムノペディ」はこの頃書かれた作品です。
さまざまな人物と交流
作曲家のクロード・ドビュッシー、モーリス・ラヴェル、そして芸術家のピカソや、詩人のジャン・コクトーなどとも舞台作品を制作したりしています。
さらに、20世紀初頭の造形美術において革新的な発展を促した3大のアーティストの一人と見なされているダダイスト※のマルセル・デュシャンや、同じくダダイストまたはシュルレアリストとして、写真家としても知られ多数のオブジェを制作したマン・レイなどとも交友がありました。
恋愛関係は短期間で終わりますが、近代のフランスの画家・モーリス・ユトリロの母、シュザンヌ・ヴァラドンは恋人でした。
※ダダイスム = 1920年代にヨーロッパで起こった、既成の秩序や常識に対して否定、攻撃をした芸術思想
「ジムノペディ」だけではない幅広い音楽性
ゆったりと反復する3/4拍子に、透明でユニークな和音が響きます。
どことなく、古代的な(グレゴリオ聖歌との関連がしばしば指摘されます)、そして東洋的な印象もあります。独特の愁いを帯びた旋律でありながら、押しつけがましいところは一切ありません。
『ジムノペディ』(Gymnopédies) は、エリック・サティが1888年に作曲したピアノ独奏ですが、
3曲で構成された第1番から第3番までには、次のような指示がありました。
第1番「ゆっくりと苦しみをもって」(Lent et douloureux)
第2番「ゆっくりと悲しさをこめて」(Lent et triste)
第3番「ゆっくりと厳粛に」(Lent et grave)
このほかにも、キャバレー時代には多くのシャンソンを作曲し、または現在の「環境音楽」といわれるものの先取りとも評される「家具の音楽」の構想、さらには「840回繰り返す」という指示のついた「ヴェクサシオン」など、20世紀初頭の前衛芸術との影響もうかがわせます。
Bunkamuraザ・ミュージアムにて「エリック・サティとその時代展」開催中
「異端の作曲家 エリック・サティとその時代展」
■Bunkamuraザ・ミュージアム(東京都渋谷区道玄坂2−24−1)
■入館料等のチケット情報はHP参照(リンク先参照)
■〜8月30日(日曜)まで。開催期間中無休
■10:00-19:00(入館は18:30まで)
毎週金・土曜日は〜21:00(入館は〜20:30)
夏の「ジメ署」を一瞬の間、忘れることのできるような、エリック・サティの世界に触れてみてはいかがでしょうか。