8月19日は「バイクの日」。バイク天国・東南アジアに、日本メーカーの底力があった!
2017年08月19日
ベトナム・ハノイの街をバイクで行き交う人々。なかには、数百台のバイクが信号待ちする光景も!
不朽の名画『ローマの休日』(1953年・米)で、オードリー・ヘプバーンがオシャレに乗りこなしていたVespa(ベスパ)、あるいは『イージー・ライダー』(1969年・米)でピーター・フォンダやデニス・ホッパーが粋に操っていたハーレー・ダビットソンなど、バイクと言えば洗練された格好いいイメージがありましたね。しかし、現在の日本におけるバイク人口は右下がりで減少しているのです。
一方で、バイクの所有台数が激増している国もあるのです。そこには、洗練&格好いい……といったイメージとは逆の、生活に根ざした「足」として活用する、パワフルかつワイルドなバイカーの姿があります。今日の記念日に現在のバイク事情をご紹介しましょう。
台湾では1.8人に1人がバイクを所有
ハンドル部分が浮いたような状態で、信じられない量の荷物を原付きバイクで運ぶ人も(中国にて)
では、いまもバイク需要が高い国を、保有台数の統計※から多い順に列挙すると……
第1位/中国・8877万台
第2位/ベトナム・4539万
第3位/タイ・2054万台
第4位/台湾・1373万台
第5位/マレーシア・1173万台……。このように圧倒的に東南アジアに集中しています。
※日本自動車工業会調べ ベトナムのみベトナム国家交通安全委員会調べ
なかでも人口あたりの所有台数が多いのは、群を抜いて台湾となっています。台湾の総人口は約2400万人ですから、1.8人に1人がバイクを所有している計算に。すごいですね。
一人あたりのGDPが1000ドルを超えると、バイクの所有者が増える!?
子ども4人を乗せて走るお父さん。危なげだけど、逞しい……(バリ島にて)
なかには、2人乗りどころか、3人乗り、スゴイい人では4〜5人が原付きバイクに乗っている光景も珍しくありません。さらには、荷台にこれでもかと荷物を積んで、平然と疾走している人も。
東南アジアを旅すると、交通ルールがあってないような、日本では考えられない光景もしばしば目にします。画像のように「大人は2人まで。あとは乗れるだけOK!」という乗員ルールが黙認されている「ある国」では、小学校低学年とおぼしき子どもがバイクを運転して街中を疾走していたり、父親が運転する原付きバイクには、最後部に乗る母親と父親の間に幼児3人が挟まれ、驚くことに最後部では母親が乳児に授乳中なんてことも!
現地のガイドさんに話を聞いたところ、信号や道路の整備が遅れていることから交通事故は頻発しているものの、保険、警察の事故処理も曖昧なまま(ルール化せず)、一気にバイク人口が増えてしまっている現状にあるそうです。
このように、人や物資の運搬から、通勤、通学などさまざまな用途をバイク一台でこなしていく人々の逞しさは、東南アジアのバイタリティを表してしているように感じます。もちろんバイクを愛用する理由は交通インフラの問題もありますが、やはりクルマに比べて安価であるというのが大きな理由です。
── というのも、ひとつの目安として「一人あたりの名目GDPが1000ドルを超えるとバイクの所有者が増え、3000ドルを超えるとクルマの所有者が増える」と言われているのです。
東南アジアのバイク天国から、日本に逆輸入されるバイク
ウォッカの空き瓶にガソリンを入れて少量販売する雑貨屋も!(インドネシアにて)
そして、各メーカーは東南アジアでも技術面での強いつながりと、故障しにくい、軽くて丈夫、性能・燃費がいいといった様々な理由から業界を牽引し、東南アジアのバイク天国を支えてきました。
台湾を例にすると、1960年代にホンダの技術協力を得た現地メーカーが生産開始。そして、技術力を得て独立していったバイクメーカーや、ヤマハ、スズキの現地法人の登場により、台湾国内の市場は活性化していきます(ホンダは撤退)。80年代になると市場は飽和状態になり、ヤマハなど現地法人を含めた各社は日本をはじめ、世界へバイクを輸出するように。ホンダは2015年に大型バイク市場などを見込み、再参入します。
現在、生産台数トップの国はインド。インド最大手でありホンダとの提携を解消したヒーロー・モトコープと、ホンダの現地法人の二強が、シェア争いを行っています。ホンダも日本にバイクを輸出(逆輸入)しているほどです。
リターンバイカーが支える、日本のバイク熱
路上を埋め尽くすバイク、バイク、バイク(バリ島にて)
一般的に「バイクは危険!」というイメージがありますが、風を感じながら走るバイカーはみな、車や自転車では体感できない得も言われぬ気持ちよさや、五感で感じる疾走感は何ものにも代えがたい……と言います。
超高齢化社会に突入した日本では、バイクブームはすでに遺物なのかもしれませんが、バイクの記念日にバイク事情から透けて見える国のパワー、人々の勢いなどに思いをはせつつ、バイクについて考えてみてはいかがでしょうか。