乾燥注意報とは?基準や発表時に注意すべきポイントを解説
乾燥注意報は、乾燥によって主に火災の発生リスクが高まっていることを報せるための情報です。ただし、乾燥による影響は火災に限ったものではなく、感染症の流行のしやすさや静電気、肌トラブルといった日常生活にも大きく関わります。
この記事では、乾燥注意報の定義や目的、基準に加えて、どんなときに発表されやすいのか、発表された際はどんなことに気をつければ良いかについて詳しく解説します。
乾燥注意報とは?
東京都における乾燥注意報の発表日数と火災発生状況(火災件数・焼損面積) (東京消防庁のデータ参照)
実際に、東京都における月別の火災件数、焼損面積(5年平均)を見てみると、いずれも乾燥注意報の発表日数とほぼ比例しています。このことから、乾燥による火災や延焼の危険性、そして、それらに対して乾燥注意報を発表することの重要性が読み取れます。
ちなみにこの「乾燥注意報」という名称は、1988年(昭和63年)の3月までは「異常乾燥注意報」でした。情報の内容自体に変更はありませんでしたが、「異常」という割には発表頻度が高く、本来の言葉のイメージとずれがあることから、現在の名称へと変わりました。
乾燥注意報の発表基準
乾燥注意報の発表基準の一例
乾燥注意報の発表基準は、「空気がどれくらい乾燥しているか(=最小湿度)」と、「木材がどれだけ乾燥しているか(=実効湿度)」の2つを主な目安にしています。
<最小湿度>
1日の中で最も低い相対湿度(※)のこと。
晴天時には、最高気温が観測される昼過ぎに最小湿度が観測されることが多くなっています。
<実効湿度>
数日前からの相対湿度(※)を考慮した、木材の乾燥の度合い。
一時的に湿度が変化しても、木材の内部まで急に乾燥したり、湿ったりはしないので、そのことを考慮したのが「実効湿度」です。とくに、実効湿度が60〜50%以下になると火災の件数が増えるとされています。
(※相対湿度とは、普段私たちが「湿度」と呼んでいるもので、ある温度において空気が含むことができる最大の水蒸気量に対して、実際に含まれている水蒸気量がどれくらいかを比率で表したもの。)
なお、具体的な基準の数値は、地域によって異なります。
例えば、東京都(島しょ部を除く)では最小湿度25%・実効湿度50%、新潟県では最小湿度40%・実効湿度65%、大阪府では最小湿度40%・実効湿度60%、沖縄県では最小湿度50%・実効湿度60%です。
また基準に風速が加わる地域もあり、宮城県では最小湿度45%・実効湿度65%で風速7m/s以上または最小湿度35%・実効湿度60%となっています。
その他、各地域の乾燥注意報の発表基準は、気象庁HPで確認することができます。
→気象庁「警報・注意報発表基準一覧表」(外部リンク)
空気が乾燥しやすい天気や気象条件
空気が乾燥しやすい代表的な天気
①冬型の気圧配置のとき(太平洋側)
冬、西高東低の冬型の気圧配置になると、日本付近では大陸からの冷たく乾燥した季節風が吹きます。この冷たい風が日本海上を通る際、相対的に暖かい海から大量の水蒸気を含んで雪雲を発生させます。
雪雲は、日本の脊梁山脈にぶつかって発達し、風上(日本海)側にたくさんの雪を降らせます。一方、雪を降らせた後の空気が山脈を越えて吹き降りてくるので、風下(太平洋)側では乾燥します。
②移動性高気圧に覆われたとき
移動性高気圧に覆われたときは、晴れて空気が乾燥しやすくなります。これは、移動性高気圧が大陸生まれの乾燥した空気を連れて、西から偏西風にのって日本付近へとやってくるからです。さらに、高気圧では空気が上空から下降するため、地上では空気が圧縮されます。圧縮された空気は暖かくなる性質(断熱圧縮)があり、気温が上がると相対湿度は低くなるため、空気がより乾燥します。
なお、移動性高気圧は春と秋に日本付近を通過することが多くなります。その理由は、夏は太平洋高気圧、冬はシベリア高気圧がそれぞれ日本の天候を支配するのに対し、春や秋は偏西風の影響が大きくなるためです。
③フェーン現象が起こったとき
風が山を越えるときに、暖かく乾燥した下降気流となって、風下側で空気が乾燥して高温になる「フェーン現象」が起こります。
暖かく乾燥した下降気流が生まれる原因は2パターンあります。ひとつは、風上側で湿った空気が山を越えるときに雨を降らせ、その後、乾燥した空気となって風下側に吹きおりるパターンです(ウェットフェーン)。湿った空気よりも、乾燥した空気の方が高度による温度変化が大きいために起こります。もうひとつは、山の上空の風がふもとへと吹き降りる際、空気が圧縮されて気温が上がるパターンです(ドライフェーン)。
例えば、低気圧や台風が日本海側を通過するとき、低気圧に向かって吹く強い南風が山脈を超えると、日本海側の北陸地方などを中心にフェーン現象が起こりやすくなります。また最初に説明した冬の太平洋側の乾燥も、実はフェーン現象の一つです。
火の取り扱いに注意!乾燥注意報が発表された際の火災予防のポイント
火事を防ぐポイント
・タバコの扱いには十分気をつけましょう。タバコは、全国の火災の出火原因の第1位です。タバコのような小さな火種でも十分火事になり得ます。寝タバコやポイ捨ては絶対にやめましょう。さらには、消したつもりでゴミ箱や灰皿に捨てたタバコから発火することも。消したつもりにならない、吸い殻はこまめに捨てる等を意識してください。
・コンロやストーブも火災の原因として多く挙げられます。コンロから離れるときは、ちょっとの時間でも必ず火を消してください。また、コンロやストーブの近くには燃えやすいものを置かないようにしましょう。
・たき火や野焼き(※)は、あらかじめ乾燥注意報の発表状況をチェックし、発表中は控えましょう。
(※そもそも、野焼きは法律等で原則禁止とされており、例外として認められているものしかできません。また例外の場合でも決められたルールに従う必要があります。事前にしっかり確認をしましょう。)
こうした火の取り扱いは普段から注意していただきたいところですが、乾燥注意報が発表されたときは、いつも以上にその意識を強く持ちましょう。
また、最近は電気製品が原因の火災も増えており、火を使わない場所でも火災が起きるリスクがある点にも注意です。タコ足配線をしていないかやコードが家具の下敷きになっていないか、コンセントにホコリがたまっていないかなど、定期的なチェックを心掛けましょう。
火事だけじゃない!乾燥による体調不良・静電気・肌荒れの対策方法
乾燥時、火災以外に注意したいポイント
◆風邪やインフルエンザなど体調管理に注意
湿度が低くなると、喉や鼻の粘膜の防御機能が低くなるため、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなります。乾燥時は、体調管理にも十分注意をしてください。
室内の換気を行いつつ、加湿器を使うなどして適度な湿度(50〜60%)を保ちましょう。また、うがいは喉の乾燥を防ぎ、ウイルスなどを洗い流す効果があります。うがいやマスクの着用も心がけましょう。
◆静電気に注意
乾燥時は、あの痛くて不快な静電気にも注意が必要です。私たちの身の回りの物は、+やーの電気を帯びています。水は電気を通しやすいので、湿度が高ければ、物体から自然に電気が放電されます。しかし、乾燥すると空気中や物体表面の水分が少なくなって放電がされず、帯電します。触れたときに蓄積された電気が一気に放電されて「バチッ」となるのです。
静電気を防ぐためには、加湿器を使って室内の湿度を保つ、保湿クリームを使って肌の乾燥を防ぐ、静電気が起きにくい組み合わせの服を着るなどの対策をしましょう。
→「静電気ってどうして起こるの?簡単にできる対策も紹介」
◆乾燥による肌トラブルに注意
乾燥が続くと、肌からも水分が失われ、乾燥肌によるかさつきやかゆみといった肌トラブルを引き起こしやすくなります。加湿器の使用や、保湿ケア、十分な睡眠、バランスの良い食生活などを心掛け、乾燥から肌を守りましょう。
→「乾燥対策、湿度何パーセントから始める?手軽に取り入れられる乾燥対策グッズ!」
・東京消防庁HP「火災の実態」
