秋のバラは香りが濃厚。連休には各地でバラフェスタ開催。絶世の美女は、薔薇マニア!

初夏より大人っぽい風情です
バラをしょって登場する美しいお嬢様は、すでにローマ時代から!
貴族や裕福な市民は、バラの花で周囲を飾り立てるだけでなく、ゼリーやハチミツ、ドリンクなどに入れ食用にも。とくに花びらをワインに浮かべる習慣は後世まで続きます。当時の大酒呑みたちの多くは、頭にバラの花輪をのせていました。これはコスプレの一種ではなく、バラが頭を冷やして悪酔いを防ぐと信じられていたのです。とりあえず髪の毛にしみ付いた酒臭さを消す効果はあり、当時お酒とバラは切っても切れない関係だったようです。また、バラは葬儀に用いられ墓地に植えられ、ローマでは死者の祭典を『バラの日』と呼びました。
バラには人を狂わせる魔性の魅力があるのかもしれません。
皇帝ネロの「バラ狂い」はとくに有名で、莫大な経費をかけて 室内から歩道・浜辺までバラの花で埋め尽くしたといいます。晩餐会や酒宴の天井から、来客の上にバラの雨を土砂降りに降らせるのが大好きで、おもてなしが激しすぎて花の重みでお客さんが窒息したこともあるとか。お妃の葬儀には、供給地の年間生産量を超えるほどの香料を使って、4キロ先までバラの香りで満たしたとも伝えられます。
また、シチリア島のある司令官が「住民に金銭を強要して苦しめた」かどで告訴された際、人々から非難されたその「過度の贅沢」とは「地方へ旅行するとき、バラの花びらを詰め込んだ座布団に座り、頭にバラの冠をかぶり、鼻の下にバラの花びらを詰めた小さな匂い袋をいつもぶら下げていた」という内容だったそうです。罪を犯してでも嗅いでいたいくらい、バラの香りがお気に入りだったのですね!
新鮮な切り花を欠かさぬよう 私設のバラ園が各地につくられ、開花期間はバラの咲く地で過ごすことが流行しました。バラ好きにはたまらない季節だったことでしょう。バラ園で栽培されていたのは、香りの濃厚な秋咲きのダマスクバラと考えられています。
マリー・アントワネットやナポレオン皇妃ジョゼフィーヌなど、歴史上の高貴な人たちに熱狂的に愛されてきた「特別な花」。こうしてバラのイメージは定着していったのですね。
クレオパトラに学ぶ、バラで男性をとりこにする方法とは?

憧れの美女風呂
「もしも、クレオパトラの鼻が1センチ低かったら、世界の歴史は変わっていたであろう」。 パスカルの有名な言葉ですが、「目が高い」のように「鼻が高い」は「香りの価値をよく知っている」という意味もあったのでは?と思えるほど、クレオパトラは香りの演出に長けていたようです。
バラの香り成分はホルモンにはたらきかけ、ストレス緩和やアンチエイジング効果に優れています。「バラのある生活」は、女性を若く美しくしてくれるのですね。しかも、男性がバラの香りを嗅ぐと、ドキドキうっとりした気分になるという調査報告も。一種のホレ薬といえるかもしれません。クレオパトラは その効果をよく知っていて、自分の美にも男性ゲットにも活かしたにちがいありません。シェイクスピア『アントニーとクレオパトラ』では、アントニウスと会うときは「鼻を打つ」バラの芳香で迎える様子が描かれています。
当時のエジプトでは香料の工場もつくられ、とくにバラの香料がローマなどに輸出されていました。一回に使用する香料が今の金額にして20万円にもなったといわれ、香料産業はエジプトにとってとても重要だったのです。賢いクレオパトラは、高価なバラをふんだんに使って香りをふりまき、自国の価値をアピールしていたのかもしれませんね。
ローマのプレイボーイは、恋人のことを「私のバラ」と呼んだそうです。最初に咲いたバラの花を恋人にプレゼントするのが習わしだったとか。
そしてバラは、秘密を守るシンボルでもありました。天井にバラが描かれていたり彫刻されている部屋なら、そこでの会話は内密にすることが約束されていたのです。「バラの下で」を意味する「sub rosa」は、「秘密厳守」と同義語として用いられていたといいます。
各地でバラフェスタ開催! 香りに包まれて、ロマンチックな秋の一日を
全国の名所を、リンク先でご紹介しています。イベント内容や開花状況をチェックのうえおでかけください。咲き誇るバラに囲まれて、優雅な1日を過ごしてみては。
『バラの誕生』大場秀章(中公新書)
『香りを楽しむ』吉武利文・川上智子(丸善ライブラリー)