日本の打ち上げ花火は世界一!? 世界に誇る日本の花火師の技術
2015年08月21日
花火師の技術、職人魂、創造美がまさしく火花を散らす、「全国花火競技大会」(大仙市大曲)の様子
同大会は花火師がつくった花火を自ら打ち上げ、技術や独創性を競い合う大会。
最も優秀と認められた花火には、花火師にとって最高の栄誉となる内閣総理大臣賞が授与されます。
夜空を焦がす大輪は、いまや日本人にとってなくてはならない夏の風物詩ですが、形・色彩・リズム感・立体感・雅趣が調和したその芸術美は、まさしく世界トップクラス!
今回は「全国花火競技大会」開催にちなみ、日本の打ち上げ花火に迫ります。
日本式と欧米式の、打ち上げ花火の相違って?
シンプルな色使いの欧米の打ち上げ花火
基本的に日本の花火玉は球体ですが、欧米諸国の花火玉は円筒形(お茶っ葉の缶のような形)をしています。
この相違をさらに具体的に見てみると……
【欧米式の花火】
一種類の火薬をプレスしてつくる、いたってシンプルなものが多く、空に上がった時に円筒形の缶の蓋や底の面が外れて中身が飛び出すため、花火は垂れ下がるような形状で夜空に広がります。
そもそも欧米の花火は、貴族や富める者が鑑賞するためのものであり、鑑賞者が見る一方向に発光の形を合わせてきた歴史があります。そのため球状にする必要性がなかったといわれています。
さらに昨今では、欧米の花火はエンターテインメントショーの色合いが濃くなり、花火を純粋に楽しむというよりは、音楽やライトアップなどを組み合わせた演出の一環として、花火が打ち上げられるケースが多いそう。
【日本式の花火】
球体の花火玉の中に詰められた火薬も、また球体であることが欧米との大きな差であり、花火師は球体の花火玉の中に火薬を詰める工程で、火薬が飛び出す方向を緻密に計算していきます。
欧米と異なる点は、日本の花火大会は古くから河川で開催されることが多く、季節の花を愛でるようにどの方向からでも、同じ形状の花火が鑑賞できる庶民の楽しみとして親しまれてきたこと。
こうした背景もあって、今日のような「世界一華麗な芸術美」とも称される日本の打ち上げ花火が完成したことになりますが、いまだ何万人もの人が同じ夜空を見上げてうっとりする花火大会のかげには、花火師たちの職人技ともいえる、繊細かつ高度な技術が結集しているといえます。
家康が愛した江戸の花火が、日本における花火の始まり
1543年、種子島に鉄砲と火薬が伝えられた後、1613年にイギリスの国王使節ジョン・セーリスが徳川家康に披露したのが、日本における花火の始まりと言われています。
徳川家康はじめ将軍家などの間で花火の人気が次第に高まり、やがて庶民の間にも花火人気は広まり、現在の隅田川花火大会の原型「両国の川開き」が、1733年に初めて開催されました。
さらに、江戸での花火人気に火をつけたのが「玉屋」「鍵屋」という2大花火師の出現です。
現代にも伝わる「たまや~、かぎや~」のかけ声は、江戸時代の人気花火師を称えるものだったのです。
華麗なる職人技、花火師の仕事とは?
伝統の手筒花火を揚げる花火衆
① 花火の製造、打ち上げ ② 花火大会の準備 ③ 花火大会の片付け
中でも、花火師の仕事のメインとなる①を行うためには免許が必要となります。火薬類取締法に基づき、花火を打ち上げるためには、十分な知識と資格が必要となり、「煙火打揚従事者手帳」を持つことが最低限の条件です。
もちろん、この資格を持っているからといって、個人で勝手に花火を打ち上げることはできませんし、美しい花火を打ち上げられる技術を持ち合わせられるわけではありません。職人の世界に飛び込み、技を習得するための努力を重ねていき一人前の花火師になっていくのです。
トップクラスの花火師が技を競いあう「競技花火大会」
競技花火大会の中でも有名なのが、秋田県大仙市の大曲で開催される「全国花火競技大会」。
この大会は内閣総理大臣賞、経済産業大臣賞など数々の栄誉ある賞が授与される花火界の権威ある大会です。
こういった競技花火大会は花火師たちの情報交換の場ともなっているようで、常に切磋琢磨しながら技術を磨いているようですね。
私たちが花火を見るのは主に夏の間だけですが、実は花火師の方々は一年を通して打ち上げ花火の製作に携わっています。
丹精込めて作り上げた打ち上げ花火の数々。一つ一つの花火に花火師たちのメッセージや独創性がのせられています。そんなことを思いながら眺める打ち上げ花火は、一層美しく感じるかもしれませんね。