球児を取り巻く環境に変化が。どうなる令和の高校野球!?
2019年08月04日
夏の風物詩、高校野球
うだるような暑さの夏休み期間中に高校の部活動は全国大会が行われるケースが多いのですが、なかでも夏の高校野球はテレビ中継されるため、甲子園出場に懸ける高校球児たちの熱い思いやその姿に、毎年多くの人が胸を打たれますね。
しかし最近「時代の変化とともに、高校野球を取り巻く環境を改善していこう」という声も上がっているのです。その課題とは、例えば「エース投手の体を守るために無理をさせずに温存させた」という最近の話題もそのひとつですし、「ギラギラと陽光が照りつける灼熱の球場での連投」や「育成か勝利か」などさまざま……。
はてさて、令和に突入した時代に高校野球は、どう変わっていくのでしょうか?
負けたら終わり。重すぎる「一試合」の価値
日程の厳しい地方大会では「連戦」「連投」になることも
つまりは、一戦でも負けたらそこで甲子園出場の夢はついえ、球児の夏が終わることになります。そして、敗戦したチームの3年生の多くは、この時点で引退を迎えることになります。
しかし、それまで地道な努力を積み重ねてきたからには、少しでも長く試合を行いたいもの……。「負けたら最後」という緊張感で戦うトーナメント戦は、「全試合で勝たなければならない」という絶対的使命感が伴うため、球児にかかるプレッシャーははかり知れないものがあるでしょう。
また、勝ち上がったとしても、日程の厳しい地方大会では「連戦」「連投」になることも普通です。うだるような暑さの中で試合を重ねる疲労感、そして、連戦による心と体の疲れも、球児にとって大きな負担となります。
そうした課題から、高校野球においては、レギュラーに限らずいろいろいな選手を試合に出場させる機会を設ける方法や、緩やかな日程にするためにリーグ戦を導入すべき……という改善案も多くあげられているのです。
守るか攻めるか……投手の球数制限
エースには重い責任感が伴います
「エース投手の体を守るため、無理をさせずに温存させるべきか」
「甲子園出場とエース投手の体の温存、どちらを優先すべきか」
「チームの勝利を優先させるため、選手の無理は致し方ない判断か」
野球関係者はもちろん、多くの人にとって意見が分かれる難しい問題が今夏、提示されたことになります。
この課題は、「圧巻の数字をマークする有力選手の多くが地方大会で敗退する」問題や、「甲子園に勝ち進むための“無理な起用”は是か非か」という問題を内包してます。
そうした問題に先駆けて、今春、新潟県高野連は投手の球数制限を実施しようと試みましたが、実現はしませんでした。
私立の強豪校はスポーツ推薦で優秀な選手を多く抱えることができますが、公立校となると難しい問題も出てきます。そもそも部員数に限りがあるので、試合で投げられる投手をどれだけ育成できるかが、大きな問題となるからです。
私立校と公立校の選手層の違いは古くからの論議の対象となってきましたが、今夏の地方大会で起きたエース投手が決勝戦で登板しなかったという象徴的な課題は、高校野球界に携わるすべての人が感じているけれど、最善の解決策がなかなかみつからないという深くて重い課題に、“より強い光”を与え、問題を浮き彫りにした事例といってよいでしょう。
ロングヘアー、金髪。野球部員が個性を出すのはNG?
坊主頭が高校球児のスタンダード
坊主頭から連想する「真面目で純朴」といったイメージも、高校野球ファンにとって、応援したくなる気待ちを抱かせる大きな要素なのかもしれませんが、野球はやりたいけれど坊主頭になるのはちょっと……という少年も最近は多くなっているようです。
というのも、他の競技の高校スポーツは必ずしも坊主頭ではないのに、野球にいたっては全国大会に出てくるほとんどの高校の選手が坊主頭だからです。
どこまで協調性を求めるか……、髪型がプレーやスポーツマン精神にどれほどの影響をおよぼすのか……こちらも賛否が分かれる深くて重い課題ですが、ダイバーシティの時代に突入したいまこそ、髪型も個性のひとつととらえ、柔軟性に富んだ野球部が誕生しても、まったくおかしくない話ではないですね。
例えば、「スカート丈はひざから○cm」「髪の色は黒。パーマやカラーは禁止」という画一的な校則がここ数年問題になっていますが、髪型、髪色、服装は個性であり、全員一緒でなくてはならないと決めてしまうことは、さまざまな国籍をもつ児童・学生がクラスで一緒に学ぶ令和の時代にはそぐわない、という考え方が強くなってきています。
坊主頭になるのはちょっと……という少年も最近は多くなっているよう
── 昭和、平成の時代に「これぞ高校野球!」と支持され、当たり前とされていたことが、令和という新しい時代の中で変容していくことは必須でしょう。
何より、甲子園を目指す高校球児が、悔いなく野球に打ち込める環境が整っていくことを願いながら、今年も高校球児たちに大きなエールを送りたいですね。