大雨のしくみ
台風による大雨のしくみ
台風は中心付近以外にも、中心から離れた地域に大雨をもたらすことがあります。
■台風本体の降水
台風の目を囲うようにある非常に発達した積乱雲のアイウォール付近では、暴風と共に大量の雨が降り、猛烈な暴風雨になります。また、アイウォールの外側にはスパイラルバンドと呼ばれる積乱雲群が取り囲みます。このため、台風中心付近では、一時間に80㎜以上の猛烈な雨を伴う暴風雨に注意が必要です。
■台風周辺の降水
スパイラルバンドの外側の約200~600㎞のところに存在する帯状の雨雲群をアウターバンドといいます。そこでは、竜巻が発生することもあり、断続的に激しい雨や雷雨があります。また、アウターバンドより離れた地域でも、台風からの暖かく湿った空気が流入することによって、地形性の降水や前線活動の強化が発生し、大雨になることがあります。
温帯低気圧による大雨のしくみ
南北の温度差を解消するために発生する温帯低気圧は、前線を伴います。
■温暖前線周辺の降水
温暖前線は、低気圧の中心に向かって流入する暖かい空気が、冷たい空気の上に乗り上げることで発生します。層状の雲が発生し、寒冷前線よりも遅く進むため、通過するとき比較的穏やかな雨が長く降り続くことが多いです。
■寒冷前線周辺の降水
寒冷前線は、冷たい空気が暖かい空気の下に入り込もうとすることで発生します。積乱雲などの活発な雲が発生し、速い速度で移動するため、通過するとき短時間で激しい雨になります。低地の浸水や河川の急な増水、土砂災害に注意が必要です。
停滞前線による大雨のしくみ
暖かい空気と冷たい空気の勢力がぶつかり合うことによって停滞前線が発生し、その周辺で雨が降ります。春の長雨の時期や梅雨時期、秋の長雨のころに現れやすく、それぞれ春雨前線、梅雨前線、秋雨前線と呼びます。ぐずついた天気が続き、大気状態が不安定になりやすく、ときとして発達した雲が発生して大雨をもたらします。
特に梅雨末期には梅雨前線に伴う発達した雲により大雨が発生し、近年は毎年のように大雨特別警報が発表されるので、警戒が必要です。
線状降水帯による大雨のしくみ
台風や低気圧、停滞前線にいずれにおいても「線状降水帯」といわれる非常に激しい雨が同じ場所で降り続く、危険な現象が発生することがあります。
線状降水帯の定義は、「次々と発生する発達した雨雲(積乱雲)が列をなした、組織化した積乱雲群によって、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することで作り出される、線状に伸びる長さ50~300km程度、幅20~50km程度の強い降水をともなう雨域。」とされています。
通常、積乱雲は雨を降らせると1時間程度で消滅してしまいます。
線状降水帯の場合でも同様で、1つ1つの積乱雲は雨を降らせるとたちまち消滅してしまいますが次々と発生した積乱雲が、積乱雲群となって同じ場所を通過することで長時間の強雨をもたらし水害を発生させます。
線状降水帯は、その形成過程・構造によっていくつかの種類に分けられます。
ここではその中でも、長時間の大雨をもたらし災害に直結する恐れが特に高い「バックビルディング型」線状降水帯について説明します。
下層の暖かく湿った空気が大量に流入し、その空気が地形や局地的な前線などの影響によって、持ち上げられて雨雲が発生します。大気の状態が不安定な状態の中で、雨雲は積乱雲にまで発達し、さらに次々と積乱雲が発生します。上空の風がこの積乱雲を押し流すことにより、発生した積乱雲が列になります。これにより、同じ場所で長時間の強い雨となります。
この結果、上空から見ると線状に連なる強い降水域が、同じ場所で停滞しているように見えます。