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    富士山、最後の噴火から319年。もし噴火したら何が起きる?専門家が指摘する溶岩流・火山灰・火砕流の3つの脅威

    いつ起こるかわからない富士山噴火。

    最後の噴火から319年、長い沈黙を続けている。そんな富士山がいま噴火したらどうなるのか。吹き出したマグマはどこまで地表をのみ込むのか。私たちの生活はどうなるのか。

    いま知っておきたい3つの脅威を取材した。

    富士山、最後の噴火は今から319年前

    火山研究のエキスパート富士山科学研究所・吉本充宏研究管理幹によると、「過去には30年に一度くらい噴火をしてきた。高頻度で噴火をしている火山。現在は300年間ちょっと静かにしている。これが非常に不気味な状態であると言っていいと思います」と現在の富士山の状態を解説する。

    富士山が最後に噴火したのは、今から319年前の江戸中期。大規模噴火を起こした富士山の噴煙は、上空20キロメートルまで上がり、当時の江戸でも火山灰の被害があった。

    不気味な眠りを300年以上続けているという富士山。その地下には、いまもマグマだまりが息づいているという。

    「マグマはあります。マグマだまりというのが、富士山の地下20キロぐらい、非常に深いところにあり、深部低周波地震という活動は1週間に何回か起こっている。マグマが動こうとしている痕跡は常に見えている」(富士山科学研究所・吉本研究管理幹)

    富士山とその周辺の火口を表した地図には、富士山の裾野に不気味に点在する無数のおわん型の地形、過去の噴火ができた火口がある。富士山は山頂だけでなく、どこから噴火するのか、わからない山でもあるそうだ。

    1つ目の脅威「溶岩流」

    そもそも富士山の噴火はどのように起こるのか。富士山の地下約20キロにはマグマだまりがあると言われ、噴火が近づくとこのマグマだまりからマグマが上昇。このとき、地下では低周波の地震など、小さな揺れが発生するという。

    さらにマグマは、硬い岩盤を削りながら、枝のように分かれて上昇。この頃には人が感じるほどの揺れが発生し、そしてマグマが地表に到達、噴火に至る。

    しかし、1707年の宝永噴火は山頂の火口からの噴火ではなく、枝分かれしたマグマが横に流れ、富士山の南東斜面から爆発噴火した。

    次の噴火はどこからなのか。周辺の火口か、別の新しい火口か、それとも山頂なのか、噴火口を予知することはできないという。

    では、富士山が噴火すると何が起こるのか、1つ目の脅威が「溶岩流」だ。

    マグマが火口から吹き出し、地表を流れ出す。その温度は1000度を超え、建物や木々を焼き、のみ込んでいく。

    1983年の三宅島の噴火では溶岩噴出が発生し、川のように溶岩流が流れ出した。その溶岩は、三宅島阿古地区に進み、約400軒の家が溶岩にのみ込まれ、村は壊滅状態になった。

    もし富士山が噴火したら、最大で約50キロ、神奈川県の相模湖まで溶岩流が到達する可能性があるという。

    2つ目の脅威「爆発噴火」

    さらに2つ目の脅威が「爆発噴火」。

    爆発を伴う激しい噴火が起きると、火口近くには無数の噴石が吹き飛ばされていきます。実際に、噴石によって多くの犠牲者が出た噴火が2014年に発生した、長野県と岐阜県にまたがる御嶽山の噴火。

    火口から約30メートルの場所で撮影された噴火直後の映像には、次々と噴石が吹き出し、四方八方から激しく飛び散っている様子が見受けられる。

    逃げる間もなく、噴煙と噴石が登山者をあっという間に襲い、火口から飛び散った噴石はものすごいスピードで登山客の体に当たったという。

    山小屋の窓も割れ、壁には飛んできた噴石が食い込み、大きな噴石は頑丈な小屋の屋根を突き破った。

    この噴火は、死者・行方不明者63人を出し、戦後最悪の火山災害になった。

    しかし、富士山の噴火はこの規模ではすまないという。

    吉本研究管理幹は「何桁も違う大きさで、富士山噴火の方が大きいです」と話す。

    その猛威を物語るのが、1991年に約500年ぶりに噴火したフィリピン・ピナトゥボ山。5日間に及んだ噴火は、300年以上前の富士山・宝永噴火よりも数十倍大きい規模で、噴煙は最大約40キロ上空、成層圏にまで達し、甚大な被害をもたらした。

    宝永噴火の痕跡には…

    吉本研究管理幹が所属する富士山科学研究所には、宝永噴火の痕跡がいまも保管されている。

    宝永噴火時の富士山近郊の火山灰はぎとり標本を見ると、当時どれくらい火山灰が積もったのかがわかる。

    吉本研究管理幹いわく、「160センチくらいですかね」と標本を示した。

    宝永噴火の16日間で、富士山近郊は最高3メートルの火山灰が積もったとされ、神奈川県の横浜あたりでも10センチ、千葉でも8センチ、積もったという。

    火山灰は、火口から遠ざかると粒子がどんどん細かくなる。

    東京大学で発見された宝永噴火の火山灰の化石を電子顕微鏡で見ると、鋭利で細かな粒子は水を含むとまとまりやすくなるため、吉本研究管理幹は「こういった細かい噴石があるだけで、水が適度に入ると粘り気が出てくる。そうするとスリップしやすくなる」と話した。

    2011年1月に52年ぶりに噴火した鹿児島県新燃岳。高く噴き上げた火山灰は、市街地に積もり、航空・鉄道などの交通機関や農業・観光分野に大きなダメージを与えた。

    富士山で爆発噴火が起こると、遠く離れた東京でも影響は避けられない。

    大規模噴火が起きるとどうなる?

    内閣府と東京都のシミュレーションでは、富士山で大規模噴火が発生すると、噴煙が約20キロ上空まで上がり、西南西の風が吹くと、火山灰が東京方面へ。約1、2時間で横浜に、さらに約2、3時間で新宿に到着する。

    火山灰が東京に到着してから約1時間、富士山から100キロ離れた新宿では、空が薄暗くなり、降灰がはじまる。鉄道は約0.5ミリの火山灰で運行停止。多数の帰宅困難者が発生する恐れもある。

    さらに火山灰は3ミリ積もり雨が降ると、停電やスマホなどの通信障害が発生。

    火山灰の東京到達から24時間後には、内閣府によると新宿の降灰が3センチ以上の厚さになると分析している。

    雨が降ると多くの車が走行不能になり、物流だけでなく、停電や配管の詰まりなどで水道や下水道にも影響が広がる。

    さらに生活物資の入手も困難に。そして火山灰到達から2週間、家庭の備蓄も底をつき始め、支援物資もなかなか届かない状況に。通勤通学はもちろん、生活インフラ、さらに食料の確保にまで大きな支障が出る恐れがある。

    一方、木造家屋では屋根に火山灰が30センチ以上積もった状態で水を含んで重くなると、倒壊する恐れがある。

    3つ目の脅威「火砕流」

    火山灰が首都圏にも甚大な被害をもたらす一方で、富士山周辺で考えられる3つ目の脅威が「火砕流」だ。

    1991年に起きた雲仙・普賢岳の噴火で被害を拡大させたのが火砕流。噴火により噴煙や溶岩の塊が崩れ落ち、高温の火山灰や砕けた岩などが一体となって猛スピードで斜面を流れ落ちる。

    雲仙・普賢岳の火口にも少しずつ流れ出た溶岩が冷え固まり、巨大な溶岩ドームが出現していた。溶岩ドームの割れ目から赤いマグマが見え、やがて巨大化した溶岩ドームが少しずつ崩れ始める。

    火砕流の速度は時速100キロを超え、温度は700度に達することも。巻き込まれれば一瞬にしてすべてを焼き尽くすといわれている。この噴火では、噴火取材をしていた報道関係者を含む43人が犠牲となった。

    もし、富士山の北東側で火砕流が発生した場合、山梨県富士吉田市の市街地近くまで及び、その距離は山頂から約12キロに到達する可能性があるという。

    富士山噴火は現代社会がいまだ経験したことがない未知の災害。その予測不能な噴火に立ち向かう観測の最前線が気象庁にある。

    気象庁にある噴火観測の最前線

    それは、部外者立ち入り禁止の「地震火山オペレーションルーム」。地震火山部火山観測・警報センターの近澤心火山機動観測班長は「今後噴火活動に至る恐れがある、そういう活動が懸念されるような火山について51選定して、24時間体制で監視をする場所です」と解説する。

    この部屋では多くのモニターが並び、火山に関するさまざまなデータや映像を集約している。

    近澤火山機動観測班長は「観測機器を用いることで、噴火に至る可能性があるような変化があれば、それを事前に捉えて見逃さないように監視を続けている」と話す。

    富士山の異変を24時間監視する観測地点の配置図には、富士山を囲むように47カ所の観測地点を設置している。富士山を取り巻く監視装置で、噴火の兆候は数週間から1カ月前には発見できるという。

    吉本研究管理幹は「富士山は必ず噴火する。それがこの1週間後なのか、1カ月後なのか、1年後なのか、10年、100年後なのかは分からない」と述べた。

    富士山科学研究所には「富士山研まつり2026」として、火山観測のドローンを間近で見たり、火山から噴き出した石に触れたりし、富士山で起こりうる災害を学べるイベントを開催していた。

    吉本研究管理幹は「火山からの距離によって自分たちが遭う災害が変わってきます。火山のことを理解することが一番の防災対策。イベントを通して理解して、富士山のこと、石のこと、理解してもらうのが重要です」と語る。

    いつ起きるかわからないからこそ、事前に知ることが防災につながっていく。

     

    富士山、最後の噴火から319年。もし噴火したら何が起きる?専門家が指摘する溶岩流・火山灰・火砕流の3つの脅威

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