雷さまもご退場!秋は「雷乃収声」を迎えました
2017年09月23日

さて、雷の声が収まるとはどういうことでしょうか? 昔の人は雷の音に何を感じていたのか、知りたいと思いませんか?
雷の前に「ピカ-ッ!」と光る稲妻に期待したのは、なに?

俳句では「雷」は夏の季語、「稲妻」は秋の季語になっています。
「日雷(ひがみなり)田を這うて稲いたはれり」 茨木和生
「稲妻の百刃(ひゃくじん)稲田湿りもつ」 吉田銀葉
「日雷」とは晴天の時に雨をともなわない雷のことです。お米を作る悲喜こもごもが感じられます。
もう雷は鳴らないけれど……秋は雨の季節でもあります

春の雨といえば静かに降る「春雨」が季節の明るい雰囲気を伝えています。秋の情景を表す雨といえば何でしょうか。秋の長雨といわれるように少し陰鬱に降り続く雨を連想しますね。「秋雨」もありますが「秋霖(しゅうりん)」はいかがでしょうか。音の響きからしとしとと止まない雨の寂しさを感じませんか?
「秋霖の濡れて文字なき手紙かな」 折笠美秋
秋も深まってくると降り続く雨から、降ったり止んだりという「時雨(しぐれ)」になります。
「鷺ぬれて隺(つる)に日のさすしぐれ哉」 与謝蕪村
それぞれに雨の特徴を詠み当てていますね。降る雨をじっと観察しているするどい目や、自然を素直に受けいれてことばに表していこうとする日本人の感性って、素敵じゃないですか。
春はゆっくりと、秋は足早に。どうもそんな感じがするのですが……

春は第七候から十二、十三候と春分をはさんで七候かけてゆっくりと進みますが、秋は第四十五、四十六、四十七候と秋分をはさんで連続しています。待ち望む春の訪れにくらべて秋の深まりは足早だということでしょうか。七十二候にほどこされた並びの工夫はなかなか素敵です。
参考
『俳句歳時記 秋』角川学芸出版
『雨のことば辞典』倉島厚・原田稔 講談社学術文庫