晩春から初夏にかけてが盛り──花水木

白やピンク……美しい姿を見せる花水木
さて、桜が終わるとほぼ同時に咲き始めるのが、花水木(ハナミズキ)です。アメリカ産の樹木で、多くは街道沿いなどに街路樹として植えられています。枝を覆うように白やピンクの花を咲かせるさまは、この季節に欠かせない風景と言えるでしょう。
北アメリカ原産の樹木

秋には赤い実をつけ、葉も紅葉します
科目は、ミズキ科ミズキ属ヤマボウシ亜属の落葉高木で、英語では ドッグウッド(dogwood)といいます。樹皮を煎じて犬のノミ退治に使ったことからついた名前です。日本に自生する山法師に似ているところから、アメリカヤマボウシとも呼ばれます。
もとは北アメリカ原産の樹木で、日本への移入は1915年のことでした。1912年に当時の東京市長の尾崎行雄が、アメリカの首都であるワシントンD.C.へ桜(ソメイヨシノ)の苗木を贈ったお礼として贈られてきたのが始まりです。
花言葉には、「華やかな恋」「私の思いを受けて下さい」「返礼」などがあります。
空に憧れて咲く

まるで空に向かって咲いているかのよう
一青窈さんの「ハナミズキ」という歌にも「手を伸ばす君 五月のこと」という表現が出てきます。若葉とのコントラストのせいか、花の色が少し青ざめて見え、それが独特の明るさとほんの少しの憂いをも含んでいるような雰囲気につながっているのでしょう。
「花水木」「はなみずき」など、さまざまな書き方で親しまれ、飲食店や介護施設の名前になっていることも多いようです。
季語しての花水木

桜ほど騒がれず、静かに確実に咲く花水木
そんな花水木にまつわる句があるので、いくつかご紹介しましょう。
〈はなみづき十(と)あまり咲けりけふもさく〉水原秋櫻子
〈一つづつ花の夜明けの花みづき〉加藤楸邨
〈高き風白く渡りぬ花水木〉稲畑汀子
〈家裏に廻る夕日や花みづき〉草間時彦
〈花水木ベイブリッジを乗せにけり〉松崎鉄之介
〈陽は谷へ谷を埋めて花みづき〉佐藤鬼房
〈鳩を見てをれば妻来て花水木〉石田波郷
〈昏(く)るるとき白き極みよ花みづき〉中村苑子
空を向いて咲いている花水木を眺めながら、腕を振って歩いてみると気分が変わるかもしれません。これからの季節、ぜひ花水木に注目して街を散策してみてはいかがでしょうか。