富士山の雪解けはいつ?平年値と写真で月別の変化を見てみよう

平年値でみる富士山頂の積雪の季節変化

富士山頂の最深積雪の平年値(旬ごと)
富士山頂には2004年まで測候所があり、実際に気象庁の職員が積雪状況の観測を行っていました。残念ながら今はなくなってしまいましたが、まずはこの富士山頂の積雪深の平年値(1991年〜2004年)のデータで、季節変化をみてみましょう。
グラフは、旬ごと(各月の上旬・中旬・下旬)の最深積雪の平年値です。平年値では、山頂の最深積雪は4月にピークを迎えたのち、5月から徐々に減り始め、6月にようやく1m以下になります。7月にはかなり減りますが、「積雪なし」になるのはようやく8月に入ってからとなっています。

富士山頂の年平均気温の変化(気象庁ホームページより)
1点目は、あくまで「富士山頂」の雪の状況であり、山腹などでは状況が異なる可能性があること、2点目は「最深積雪」と、あくまで期間中の最大値を元にしたデータであるため、それより少ないときもあり得るという点です。
3点目は、「14年間」という比較的短い期間の統計値であること、そして4点目は、20年程前までの観測データをもとにしたものであることです。富士山の平均気温は年々上昇傾向(1.3℃/100年)にあるため、平年値と比較して、近年は雪解けの傾向が変化している可能性も考えられます。
それでは、次からは最近(2022年)の富士山の写真で冠雪・残雪状況をみながら、各月の様子をより詳しくみていきましょう。
【4月】積雪のピーク

4月と1月(右上)の富士山のようす(いずれも裾野市提供)
なぜ富士山では、冬よりも春の方が雪が多くなるのでしょうか。
日本の冬は、大陸からの季節風(北西風)の影響を強く受けます。すると雪は風上の日本海側で降ってしまい、富士山のある太平洋側は乾燥してあまり雪や雨が降りません。
しかし、冬の終わりから春にかけて、冬型の気圧配置が緩むと、南から湿った風が吹き込むようになります。また南岸低気圧をはじめ日本付近を低気圧や前線がたびたび通過して、太平洋側でも雨や雪が降りやすくなります。標高が高い富士山では、春でも十分気温が低いので雪となり、積雪が増えるのです。
【5月】雪が解け始め「農鳥」が出現

5月の富士山のようす(裾野市提供)と山梨県側の斜面に春になると現れる雪形「農鳥」(右上)
山梨県側では、例年4月下旬~5月頃になると富士山の7~8合目に「農鳥(のうとり)」と呼ばれる雪形が浮かび、麓に春の訪れを告げます。農鳥は、鳥のような形に見えること、そして昔からこの雪形が現れるタイミングを農作業を始める目安としていたことから、そのように呼ばれるようになったそうです。
農鳥について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
→「まもなく富士山に農鳥出現 高温の影響で雪解け早め」
【6月】雪解けが加速

6月の富士山のようす(裾野市提供)
ですが、麓からは雪が少なく見えても、場所によってはまだまだ残っている場合もあります。
6月下旬頃、残雪が多い場合には、山開きに向けて登山道の除雪作業が行われることもあります。毎年7月に安全に山開きができるのは、こうした関係者の方々のおかげでもあるんですね。
【7月】登山シーズン開始 さらに雪解け進む

7月の富士山のようす(裾野市提供)
ただし、年によっても異なりますが、平年値データからもわかるように、夏でも山頂の積雪は0にならないことがあります。山頂の最深積雪(平年値)は7月上旬で11cm、中旬で5cmほど。2022年の写真でも、斜面にはまだ所々雪が残っているのが確認できます。
このため、残雪状況によっては登山ルートの開通日が例年よりも遅れることもあります。近年では、2014年に残雪の影響で一部のルートの開通が大幅に遅れました。
【8月】いよいよ山頂付近が「積雪なし」に

8月の富士山のようす(裾野市提供)
とはいえ、8月にも富士山では雪が降ることがあります。例えば、1994年8月22日には山頂で1cmの積雪を観測。なお初冠雪は前日21日に観測しています。
まとめ
日本一高い山の富士山の雪解けは、4月頃に雪のピークを迎えたのち、夏にかけて徐々に進みます。ぜひその季節ごとの富士山の姿を楽しんでくださいね。
一方で、麓がもう夏でも、まだまだ山の上では雪が残っていることもありますし、雪が降ることもあります。富士山登山に挑戦される方は、そういった点にも注意しながら山登りを楽しんでください。
※なお、今回ご紹介したのは平年値をもとにした例年の状況です。年によって雪解けの状況は変化しますので、ご留意ください。