長距離を走るとお腹が痛くなるのは、なぜだろう ?
2016年05月08日
右のわき腹が痛いのは、肝臓が揺れて、横隔膜が引っぱられるから。
右のわき腹には、肝臓や胆のうがあります。肝臓は人間の内臓の中でもっとも大きな臓器です。重さは成人男性で1200~1400g、成人女性で1000~1200g。体重の約1/50の重さといわれています。
走ることによって、この重たい肝臓が大きく揺れ、肝臓と横隔膜を結ぶ靭帯が引っぱられるために、痛みが生じます。さらに、走るとたくさん酸素を取り込もうとして呼吸筋が活発になり、横隔膜がはげしく動くことも原因です。
また、準備運動が不十分なときや、普段走らない人が走ったときなども、急に強い負荷がかかることにより、横隔膜がけいれんすることも一因といわれています。
右のわき腹が痛くならないようにするためには、腹筋をきたえてお腹を絞め、内臓を動きづらくすることが重要です。さらに上を目指すのであれば、上下にぶれない、正しいフォームを身につけることです。これらができれば、肝臓の揺れを極力おさえることができます。
左のわき腹が痛いのは、脾臓(ひぞう)が全身に血液を送ろうとするから。
もう一つの原因は、腸内のガスが一か所に集まることではないかといわれています。左わき腹にある大腸は脾湾曲部とよばれ、大腸が鋭い角度で折れ曲がっています。走ることによって全身が揺さぶられ、大腸のあちこちにたまっていたガスが、この湾曲した脾湾曲部に集まってしまいます。しかし、血液は走る筋肉に優先的に送られるので、腸の蠕動運動が鈍くなります。そこで、脾湾曲部に集まっていたガスが神経を刺激するため、左のわき腹に、腸がねじられるような痛みが出るのではないかと考えられています。
また、胃の中に残っていた食べ物が、走ることによって消化が鈍くなり、消化不良となって左のわき腹が痛くなるともいわれています。
左のわき腹の痛みについてはいろいろと議論されていて、実際のところは、はっきりした原因はわからないようですが、痛くならようにするためには、走る前の十分なアップと、普段、心肺機能を鍛えておくこと、便通をよくしておくこと、そして、急に全力で走らないことが重要であるといえそうです。
お腹の上部または下部が痛いときは、消化不良や、お腹がゆるいなど。
下腹部が痛いときは、大腸の肛門側です。走ると腸が振動して動きが活発になりすぎるので、お腹がゆるくなったり、お腹が痛くなったりします。また、緊張などでお腹がゆるくなっても痛くなります。
痛くならないためには、走る前は消化のいいものを食べることと、排便を済ませておくことが重要です。
走っているときにお腹が痛くなったら、わき腹を伸ばす。深呼吸も有効。
この方法は走りながらでもできますが、重心がずれて斜めに進みがちになるので、走るスピードを落として、周りの人にぶつからないように注意してください。また、そらしすぎると他の筋肉を傷めるので、伸ばすのは軽めに。
一度走るのをやめて、深呼吸をするのもいいでしょう。息を大きく吸ってお腹に酸素を送り込むと、お腹の筋肉の痙れんが解消されます。このとき、軽くお腹を叩くのも有効です。
梅雨の前の今ごろの時期は、走るのにちょうどいい季節です。走ったときにお腹が痛くならないように、日ごろのトレーニングが重要なことは、ランナーの皆さんなら周知のことだと思います。そろそろ気温が高くなってきますが、決して無理をしないで、ランニングを楽しんでください。