風景画だけじゃない!この秋に見たい〜ラウル・デュフィ展
《ニースの窓辺》1928年 油彩/キャンバス 島根県立美術館蔵
この秋パナソニック汐留美術館では、ラウル・デュフィを多面的に捉えた展覧会【ラウル・デュフィ展 絵画とテキスタイル・デザイン】を開催しています。デュフィと言うと明るい色彩と軽やかなタッチの風景画が浮かびますが、本展覧会ではテキスタイル・デザインを手がけた「もう一つの顔」に迫ります。中でも薔薇をはじめとする花をモチーフとした作品群は秀逸です!パナソニックの照明技術も作品・資料152点を効果的に演出します。
絵画からテキスタイルへ
《貝殻と海の馬》1922-24年頃 金銀糸の入った錦 デュフィ・ビアンキーニ蔵
ラウル・デュフィ(1877~1953)はフランスのル・アーブルで生まれ、音楽に親しむ家族の中で育ちました。美術の世界に足を踏み入れるようになると、軽やかな筆致でオーケストラや楽器をモチーフとした絵画を描き、それは見る者の心を癒す美しさです。22歳(1899)で国立美術学校へ進み、ジョルジュ・ブラックと出会いますが、ブラックらとは異なる独自の絵画を目指す中、32歳(1909)の時にデザイナーのポール・ポワレとの出会いを機に、テキスタイル・デザインの世界へと踏み出しました。明るい色彩と軽快にしてリズム感あふれるデザインは上流階級の女性たちから高い評価を受け流行します。その後リヨンの絹織物製造会社、ビアンキーニ・フェリエ社と図案を提供する契約を結びます。写真の《貝殻と海の馬》はその頃の作品です。金銀糸で紡がれた錦のデザインからは、日本の織物を連想する人もいるのではないでしょうか。
今も昔もー花モチーフの魅力
《薔薇》1980年(テキスタイル制作) 絹紬 デュフィ・ビアンキーニ蔵
1912から1928年までテキスタイル・デザインに取り組んだデュフィの作品の中で、花の作品に注目してみましょう。絵画作品にも明るさと優美さが際立ちますが、花々ー特に薔薇ーの作品にはその傾向が明らかです。展示では、下絵や原画、布地、さらに衣装となった作品を同時に見比べることができるのが嬉しいですね。写真の薔薇の作品は、デュフィのデザイン画を元に1980年にテキスタイル制作されたものです。作品全体を包む薔薇色に幸福感を感じませんか?このように残図案が現代においても新たなテキスタイル・デザインとして制作されていることも嬉しいですね。パナソニックの照明技術が鑑賞者の足元に花模様をゆらゆらと照らし出す演出もお楽しみください。
時代の流れに敏感なデュフィ
《ダンスホール〔紙の試し刷り〕》 1920年頃 木版/紙 デュフィ・ビアンキーニ蔵
1920年以降、幾何学模様などモダニティを追求するデュフィは《ダンスホール〔紙の試し刷り〕》に見られるように、近代的なモチーフで人々が時代を謳歌している様子を写し取った作品を描くようになります。初期から晩年までデュフィの作品に共通するのは、色彩の豊かさと全体に漂うその折々の場が持つリズム感です。晩年に描かれた《黄色いコンソール》は、デュフィが生涯を通して心のうちに宿していたであろう、明るいメロディーが奏でられているようです。会場出口ではデュフィ展の特別展示「マイ・フェア・レディ」の華麗な衣装が!こちらのみ撮影可能ですので余韻に浸って記念撮影してみてはいかがでしょうか。
展覧会概要 他
特別展示 マイ・フェア・レディのドレス 展示風景
特別展示 マイ・フェア・レディのドレス 展示風景
展覧会会期 2019年10月5日(土)~12月15日(日)
開館時間 午前10時より午後6時まで(ご入館は午後5時30分まで)
※11月1日(金)、12月6日(金)は夜間開館 午後8時まで(ご入館は午後7時30分)
休館日 水曜日
関連イベント
講演会 「デュフィとモード ポール・ポワレとのコラボレーションを中心に」
講師 朝倉三枝 氏(フェリス女学院大学准教授)
日時 2019年11月3日(日・祝)午後2時~午後3時30分
定員 150名(要予約)
聴講費 無料(ただし本展の観覧券と予約が必要です)
会場 パナソニック東京汐留ビル 5階ホール、自由席になります。
*未就学児はご遠慮ください。
この他、学芸員によるギャラリートーク、「デュフィ ポストカードプレゼント」など、盛りだくさんです。
最新の情報をリンクサイトにてご確認の上お出かけください。
出典・引用
・展覧会プレスリリース
・プレス内覧会時ギャラリートーク
展覧会や歳時記など、芸術全般について観たもの・感じたことを綴ってまいります。好きな言葉:「余白」、「和み」、「うつろい」
最新の記事(季節・暮らしの話題:トピックス)